116日目:烏賊琥珀。

 神聖歴六一〇二年・月見羊つきみひつじの月第七日・天気:晴


 もう朝ですか……最近は働き続けているのでそろそろお休みがほしいですね。

 折角、海へ来たのにまだ海水浴も行ってませんし……。

 決めました! 近々休日を作りましょう。たまには息抜きも必要です!

 よし、休みの為に今日もお仕事頑張りましょう!


 そう張り切ってギルドへ来たのに、中は重い空気に包まれていました。

 皆さん非常に深刻な顔をしています……これは一体?

 もしかして、先日の嵐が進路を変えて街に接近中とか?

 丁度、鑑定中の品もありますし受付で訊いてみましょう。


 受付に行くと筋肉お兄さんが慌てて近付いてきました。

 そして焦りながら昨日鑑定に出した黄色い宝石について尋ねてきます。

 えっと……もしかして厄介な代物でしたか……?

 宝石の正体を怪しみつつ、ニコさんに採取状況などを説明してもいらいます。

 話を聞き終わると、急いでどこかへ行ってしまう筋肉お兄さん。

 お兄さんが戻るまで待つように言われましたけど……嫌な予感がしますね。


 暫くして戻ってきた筋肉お兄さんに船長室へ行くように指示されます。

 あ、やっぱりこれはよくないパターンですよ、絶対。

 重い足取りで船長室へ向かうと室内には葉巻を咥えたエド船長の姿が。

 うっ……凄く機嫌が悪そうです。


 私たちに気が付くと、エド船長は大きな溜息を吐き、困った様子で机の上に昨日鑑定に出した黄色い宝石を置きました……やっぱりアレが全ての原因ですか。

 机上の宝石を指で弄びながら、その正体を知っているか訊いてくるエド船長。

 首を横に振ると、だろうな……と呟きその正体を教えてくれます。


 宝石の正体……それは烏賊琥珀クラ―ケン・アンバーと呼ばれるものでした。

 クラ―ケンは海に生息する烏賊に似た姿をした巨大な魔物のことです。

 その存在はもはや生きた災害で、多くの船乗り達から恐れられています。

 そんな魔物の名が付いているということは当然、無関係ではないはずです。


 さらに話を聞くと、この烏賊琥珀クラ―ケン・アンバーはクラ―ケンが時折海上に落とすそうです。

 つまり、それが海岸に漂着したということは、近海に落し主がいるわけで……。

 ……でも、なんで私たちは呼ばれたんでしょう?

 あ、持ち帰ってきてはいけなかったとか、そんな話ですか?


 疑問に思っていると、エド船長から一枚の赤い紙を渡されます……。

 え? これってまさか……震える手で確認すると、そのまさかでした。

 渡されたのは強制指名依頼。その名の通り、断ることができない依頼です。

 ギルドマスターから非常事態の時に限り冒険者へ発行される唯一絶対の命令です。

 

 思わず天を仰いだ瞬間、エド船長が力強く宣言します。

 マーガの街の冒険者ギルドその総力を持って大海魔クラ―ケンを討伐すると!


 ギルド内が重い雰囲気だった理由が分かりました……全員これを渡されたんです。

 

 ……マーガの街なんて来るんじゃありませんでした!!

 

 

 今日の収支

 銀貨:-32枚(宿泊費×3+ソシオ)(食事☆☆、寝床☆☆)

 金貨:+1枚(烏賊琥珀クラ―ケン・アンバー売却費)

 ――――――――

 残金:金貨2枚、銀貨66枚、銅貨93枚

    猫銀銭190


。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 ウワァーン これ絶対に無理ですよ!!

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