32日目:フラグは立てません

 神聖歴六一〇二年・皋竜こうりゅうの月第一五日・天気:曇


 久々に宿屋で迎える朝、清々しいですね。

 さぁ、朝食を頂いたら今日もバリバリ働きましょう!!


 ギルドに到着したらまず昨日預けた女の子の話を聞きました。

 保護した責任上その後が気になります。

 受付のお兄さんによると夜遅くに親御さんが迎えに来たそうです。

 

 良かったですね、すぐ家に帰れて。ほっと胸を撫で下ろしていると、お兄さんから革袋を渡されます。

 なんでも親御さんがお礼に受け取って欲しいと置いていったそうです。

 おぉ! 人助けはするモノですね!! 有り難く受け――


 ――取ろうとして手が止まりました。

 革袋に記された印に目が留まったからです。……鷲が翼を広げ羽ばたくその印は確かこの街の領主のモノです。

 ……貴族関係者だったんですね、あの子。道理で身に着けている物が高価だと思いました。

 手を止めた私を怪訝そうに見てくるお兄さん……うぅ、いやでも……。


 結局断りました。お兄さんが驚いてましたが、お礼目当てで助けた訳ではないからとか、適当な理由で誤魔化します。

 だって貴族と知り合いになるとか絶対嫌ですし。

 え? 何故かって? それは……物語の中ではこんな事から面倒に巻き込まれるのです! この街にいる間にこれ以上何かあるのはごめんです!! それだけです!!


 気を取り直してクエストを受注しましょう。

 茸採集は……ありません。うん、採り過ぎたようですね。薬草と一緒で暫く発行も買取りも中止でしょうか……。

 次に良さそうなのは……あ、別の採集任務発見です!! ただ採取物的に野宿ですねコレは……。う~ん、けど他にないのでこれに決定です。


 受注して早速出発。目的地は街から半日程歩いた場所にある岩壁です。

 そこにある光苔ひかりごけというのが今回の依頼品。名前の通り光る苔です。錬金術の触媒等に使うそうです。

 昼間は普通の苔と見分けがつかないので採取は基本夜。これが野宿必須の理由です。それがなければ日帰り可能なんですけどね……。


 日が傾き始めた頃、岩壁に到着しました。

 完全に日が落ちる前に野営の準備です。と言ってもほぼ徹夜の採取になるので、仮眠できる場所と食事の準備ぐらいですけど。

 今日の夕食は焼き締めたパンと干し肉のスープです。いつかのマルガさんを真似してみました。

 スープとか簡単です。お湯の中に干し肉と香草、塩を入れて混ぜるだけです。私でも出来ます!!


 と思ったんですが……なんか味が薄いです。塩が足りなかったんでしょうか? お肉も微妙に硬くて不味いですし。

 むぅ、そのまま食べた方が美味しかったですね……ちょっと失敗です。


 さて、光苔が輝きだすまで少し時間がありますし仮眠でもしておきましょうか。

 でも楽しみですねぇ。闇の中で光る岩壁一面の光苔は、地上の星空のようでそれは綺麗だという話なのです。

 それ目当てで時期になると受注する人もいるほどです。早く暗くならないかなぁ。


今日の収支

銅貨:-8(パン等夕食材料費)

――――――――

残金:銀貨2枚、銅貨40枚



Σ(・口・) あ、あの妙な感覚について調べるのを忘れたのです……うん、今度マルガさんに聞きましょう。早く無事に帰って来てくださいお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る