天2

『……いやカッコつけんのはやめだ、東西含めて全員聞け!住んでる樹が枯れたか!?黒い霧が出てきたか!?人が溶けて死んだか!?全部たった1人のやった事で!それを今ぶちのめそうとしてるのがうちの娘だ!』


鍔迫り合いしていた剣を強引に押し返す、つい数秒前より数段強力な一撃がサクヤとアマノハオバリを明確に仰け反らせた。


「くっ…!」


『ここで止めねえとこの先ずっと続くぞ!ちょっとエネルギーが足りなくなっただけで備蓄を切り崩すが如く人が死ぬなんて嫌だろうが!』


背後から照射された図太い光線がそれを更に後退させる。アマノムラクモを振り抜ききったスズも下駄を鳴らして2歩下がる、両者の間に水晶が割って入った。

長さはスズの身長と同程度、最も太い部分で30cmある八面体の水晶である。スズを中心とした鶴翼形態で4本展開し、それぞれが高音を立てながらビームを放出、サクヤの眼前で収束する。着弾した途端、七海的防御装甲らしきものに衝突し8本くらいに拡散してしまったが、構わず照射し続けると指数関数的に威力が増加していくそれは彼女に防御以外の行動を許さず、最終的に空中へ持ち上げ枝先方向へ押し飛ばしてしまう。照射停止と同時に走り出し、到達するまでの間、サクヤが何かしようとする度に回転させた水晶のいずれかが"斬撃"を見舞って中断させ、間もなく接触、ふた振りがもう一度押し合いを始めた。


『サクヤ…!』


先程とまったく逆転した衝突の最中、ニニギがぽつりと呟いた瞬間、彼女は最初と違う反応を示した。

何か思い出しかけた、そんな風に目を見開いた。


これはあるかもしれない、

引っ張り戻せる。


「アメニギシクニニギシアマツヒコヒコホノニニギノミコト!!」


『なんだ…!?』


「呼びかけ続けて!!」


アマノムラクモを引き戻し、背後で待機していた水晶から光線を撃ち込みつつ、体の右側で切っ先を向けたアマノムラクモの柄に右手を添える。剣による防御を許さず全力の刺突を加えたが、装甲を抜くにはまだ足りない。三度彼女を後退させるに留まり、突き立っていたミョルニルを越える。


『安心して暮らしたいなら祈れ!そうまでして得た発展に興味が無いなら賛同しろ!自分達だけでそこまで至れると胸を張れ!』


右手でそれの掴むと同時にアマノムラクモを消滅させた、手首のスナップでスイングさせ両手で握り、流れるようにまず一撃。


『思い出してくれ!岬で初めて会ったあの時から僕は忘れた日はない!』


「不愉快な…声を出すな…!」


轟音を立てて打ち合う度にアマノハオバリは一撃あたりの威力を損なっていく。ミョルニルに負けているのか、ニニギが効いているのかはわからないが。


『良い夫だったとは思わない!君の力を徹底的に利用した!あらゆる責務を君一人に押し付けた!でも願えるならば…!』


「お前は…!」


ハンマーへ持ち替えてから7撃目でアマノハオバリは完全に敗北した。真下からの打ち上げに弾き飛ばされ、サクヤの手を離れた瞬間、左手を右腰の柄へ。


「…あなたは……!」


『ッ……僕を彼女へ!』


片腕で振り抜いた夢幻真改、単なる刀は宝剣を真っ二つに斬り折った。彼女は咄嗟に次を出そうとしたが、それより前にスズはミョルニルも夢幻真改も手放し、それらとアマノハオバリが落ちる中、翡翠の刀を再び握り。


「つああああぁぁッ!!」


先程とまったく同じ刺突で


「あ……は……」


深く、深く胸に突き立てた。

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