第84話
「鶴翼の陣を展開させろ!!」
ブォォォォォォォォ…、ブォォォォォォォォ…
ほら貝が二度吹かれた。
北地区の武将たちが、元怨霊である修行僧や他地区の仲間を誘導し、V字型に展開していく。
「才蔵さん!左翼をお願い!私は右翼へ行く!!」
「姫殿!そちらは任せたぞい!!」
姫?巫女の間違いじゃ…。まぁ、いっか。
「韋駄天!あなたは遊撃をお願い!一撃離脱で危ないところを支えてやって!」
「おうよ!」
「黒爺!中衛から援護をお願い!似たような仲間に指示をして!!」
黒爺は右手を上げた。
「雛ちゃんは最後尾で治癒系の仲間に指示して!やり方は任せる!!」
「はぁ~い!」
中衛には黒爺を中心に朱狐さん、雪女さんが遠距離攻撃の出来る仲間をまとめている。
後衛には雛ちゃんと蒼狐さんを中心に治癒係となり、殿と座敷童さんが全軍の指揮をこなしていく。
敵は真っ黒な闇を
容姿は様々。
動物系もいれば、人間系もいる。
鬼の
それらが、V字型の陣形の中心の、開いている空間へなだれ込んできた。
これなら敵の先頭を三方から攻撃出来る。
さすが殿ね。
私は目の前の敵に集中した。
こちら側には、かなり大きい真っ黒な鬼が数体いる。
まずは周りの弱そうな敵から
「蘭ちゃん、行くよ!」
「はい!!」
蘭ちゃんに乗ったまま、仲間よりも速く敵陣に突撃する。
月弓を構え50近い矢を一気に放つ。
ズバンッッッ!!
一斉に飛び出した矢は全弾命中!
その矢が致命傷の敵もいる。
朱雀に持ち替え一気に敵陣に飛び込んだ。
「ヤアアアァァァアァァァァァァァァァ!!!!」
長い朱雀を鋭く横振りする。
手応えはかなりある!
それらを確認することなく、縦横無尽に駆け回る。
そうすることにより敵の陣形が崩れると思った。
遠距離攻撃が容赦なく降り注ぐ。
止まったら危ない。
そこへ巨大な鬼の張り手が吹っ飛んできた。
交わそうとしたけど間に合わない。
想像以上に速度が速い。
「ジャンプ!」
シャッと素早くジャンプしたところへ、更に別の鬼の大きな手の平が襲い掛かる。
その手の平を、更にジャンプする為の足場にして、離れた場所へ着地する。
!!
着地後も直ぐに移動する。
そこには別の鬼の拳が、移動先に別の巨人の拳が降り注ぐ。
更には遠距離攻撃により黒い光の矢が闇に紛れて飛来する。
間違いなく集中攻撃を受けていた。
「蘭ちゃん!」
声をかけて地面に降り立つ。
蘭ちゃんとお互い背中合わせに構える。
「手強い巫女がいると聞いていたが、集団での闘いは素人だな!」
敵の武士らしき魔物が話しかけてきた。
「そうかしら?あなた達こそ、何百年も暇していたから闘い方を忘れたんじゃないの?」
「何を
その言葉が終わらないうちに、無数の輝く矢が飛来する。
背後の仲間からの援護射撃だ。
敵の足が止まる。
「オオオオオリャアアアアアアア!!!」
そこへ岩男さんが文字通り殴りこみにきた。
その後ろからも続々と仲間が敵に襲いかかっていく。
私は大きいのに的を絞り、朱雀を鋭く振りぬく。
ズバンッ!!ズバンッ!!
私の隙を伺っている多数の敵を、蘭ちゃんが引っ掻き回す。
逆に隙を作り私がとどめを刺していく。
いいよ、いいよ!思ったよりイケてる!
しかし、一段落すると新たな敵が襲いかかってくる。
そう、敵は数が多い。
だけど大丈夫。
こっちは効率的に敵を倒し、向こうは物量で押してくるだけだもん。
根競べなら負けない!
反対側の左翼の方も、才蔵さんと剣士さんが先陣を切り、倒した敵の数を競い合っているみたい。
その背後から星宮天狗さんが上手く味方を指揮し、殲滅していっているのがチラホラ見える。
私も負けてられない!
ここは高賀山からの霊力が溢れでてきているのが分かるほど豊富で、そっちの心配は今のところはいらない。
むしろ体力を心配した方がいいくらい。
特に中衛は、前線への遠距離攻撃に加え、中央深く侵攻してきた敵の殲滅もこなしていて、かなり忙しい。
もちろん両翼からの援護もあるのだけども、かなり展開がめまぐるしくなってきている。
ヒューーーーーーーーーーーーーーーッ………
そんな状況の中、闇夜を切り裂くような、何かが飛来する音が空から聞こえてきた。
ドッッッッッスンッッッッッ!!
「えっ!?」
何よアレ…。そこには巨大で真っ黒な亀が空から降ってきた。
それも中央に、敵の仲間を潰しながら…。
直ぐに応戦が始まる。
だけど硬い甲羅には霊術による攻撃はことごとく弾かれていく。
手足も皮膚が固く、なかなか攻撃が通じない。
更に口元からは炎が溢れて零れていた。
マズい…。火を吹くつもりだ!
仲間にも火を扱う妖怪はいる。
しかしそれは敵一体を炎で包む程度の大きさだった。
だけどあんな巨大な妖怪から放たれたら、それこそ何人の仲間が犠牲になるか見当もつかないよ…。
「皆逃げてーーーーーー!!!」
助けにいかなくっちゃ…。そう思った瞬間!
「水樹様!」
欄ちゃんの言葉で我に返り、私を襲ってきた刃から逃れる。
攻撃してきた妖怪は、質素な和服を着こなしながらも、刀を一本携えている。しかし鞘に治めたまま柄を掴んでいた。
「居合い抜きってやつね…。」
間合いがつかめない。
それに、これには霊術も考慮しないといけない。
私が扱う朱雀のように長さが変わると思って間違いない。
朱雀を中段前面に構える。
………。
隙が無い…。
どこから攻撃しても交わされるビジョンが視える。
これはかなりの強者…。
しかも中央では雛ちゃん達がいる後衛に向けて、巨大な亀が火を吹こうと体勢を整えつつあった。
どうしよう…、どうしよう…。
私は仲間を信じるしか道はなかった。
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