193.結成-Form-
1991年7月7日(日)AM:10:39 中央区精霊学園札幌校第一学生寮男子棟一階一○一号
三井 義彦(ミツイ ヨシヒコ)の部屋で待っている四人。
ベッドに座っている桐原 悠斗(キリハラ ユウト)。
彼の隣に座る中里 愛菜(ナカサト マナ)。
悠斗はじゃれ付かれている。
河村 正嗣(カワムラ マサツグ)は、椅子に座っていた。
ニヤニヤとした顔で二人を見ている。
気持ち悪い顔しないでよ、と言われた。
沢谷 有紀(サワヤ ユキ)に軽く頭を小突かれる。
扉が開けられる音が、四人の耳に聞こえる。
数秒後、廊下から現れた二人。
義彦と銀斉 吹雪(ギンザイ フブキ)だ。
一斉に四人の視線がに向けられた。
「吹雪ちゃんも来たって事はOKしてもらえたっ事かな?」
少し首を傾げながら、吹雪を見た愛菜。
「愛菜ちゃん、そうだよ。悠斗君、こんにちわ。河村さん、沢谷さん、こうしてちゃんと顔をあわせるのは、たぶん初めましてだよね?」
「よろしくなー」
「銀斉さん、初めまして。よろしくおねがいします」
「とりあえず月曜日に登録すればいいのかな?」
「そうだな」
義彦は床に座りながら、そう悠斗に答えた。
吹雪はベッドに座っている愛菜の隣に腰掛ける。
「とりあえず、簡単にそれぞれが出来る事を伝えようか」
義彦の言葉に、五人とも頷く。
「まずは言いだしっぺの俺だな。俺は霊力のうち、火と風。最も火に関しては今回初登録だ。後は魔力。魔力に関して魔道士って事になるかな? それにIEPRにも前から登録はされている。武器は普段から持ち歩いてるからわかると思うが、刀だ。後は・・・」
そこで少し口ごもった義彦。
彼の態度に、吹雪を除く四人は首を傾げた。
「いずればれるか。後霊力闇もある。これは余り口外はして欲しくないけどな。じゃ次、悠斗な」
「僕ですか? えっと、僕は霊力の土と魔力ですね。魔力は門外漢なんですけどね。武器・・・・武術になるのかな? いろいろと教えてもらっている段階ですけど」
「篭手とかナックル、爪とかになるんだろうな?」
「たぶん、そうですね」
「んじゃ次俺な」
正嗣がそう言って、口を開いた。
「俺には黒鬼族(コクキゾク)の血が流れているらしくてね。妖力と魔力らしい。どっちも四苦八苦してるんだけど。武器は鈍器系がいいんじゃないかと親父に言われた」
「それじゃ次は有紀で」
悠斗の言葉に頷いた有紀。
「私は魔力ですね。義彦さんと同じで魔道士になるようです。防御特化になるかもしれないみたいな事を言われました」
「私は水だそうです。あ・後光って言われました。これ本当は機密事項らしいので、誰にも言わないようにお願いします。あ、霊力です」
「愛菜ちゃん、私と全く同じなんだね。私も霊力の光と水、後魔力。氷を利用する事が多いかな。武器として利用出来るのは刀剣類になります」
「四人が異能を無視すると近接だな。愛菜ちゃんと有紀ちゃんは、武器としては何を考えている?」
「え? 特には何も。ねぇ? 有紀」
「うん。私も特に何も」
「今後の為にも護身の意味も込めて、何か一つ位は使えるようにした方がいいかもな? 特に愛菜ちゃんは」
「そ・そうなんですか?」
自分の名前が出てきた為、咄嗟にそう答えてしまった愛菜。
「そうだ。何でかわかるかな? そもそも何で機密事項なのかわかるか?」
「いえ、わかりません」
「たぶんそのうち授業でもやると思うんだが。霊力の光と闇は簡単に言うとレアなんだよ。圧倒的に数が少ない上に、操る事さえ出来れば非常に強力な力になる。ちょっと厳しい事を言うけど、逆に言えば色んな所が属性保持者を欲しがるのさ。非人道的な方法を使ってでも手に入れようとする組織も過去にあった。そして今後も現れないとも限らない。IEPRでもこの二つの保持者については、詳細までは知らないが特殊な条件を満たしていなければ、検索する事さえ出来ないそうだ」
義彦の言葉に、吹雪以外の四人は驚いた。
何も言葉を吐き出す事が出来ない。
「私も義彦兄様も、ある程度力を使えるようになるまでは、こっそり警護されていたものね」
「あぁ」
「それで、鬼穂ちゃんと鬼威ちゃんが私と一緒にいたんですね」
「そうゆう事だ。悠斗も愛菜ちゃんを守れるように早く強くならないとな」
「義彦・・プレッシャーをかけないで下さいよ」
苦笑いの悠斗に、微笑している義彦。
「実際の力の細かい所はおいおいでいいだろうな。一度に教えても把握出来ないだろうしな。お互いに」
「そうですね。折角学園に来ているんだし、それなりに使えるようにはなりたいですね」
「うん、ゆーと君の言うとおりだね」
「くれぐれも光と闇属性についてはばらさないようにな。俺と吹雪はある程度一人で何とかなるとして、愛菜ちゃんのは特に。最近修練をはじめたばっかりだからな」
義彦の言葉に、強く頷いた五人。
「あ、そうだ。義彦、登録の時にチームの名前もいるんですよね?」
「そうだな」
「何かいい名前ありますかね?」
その言葉に、思案顔になる五人。
最初に考え付いたのは正嗣。
「コッキシダンとか?」
「ださいです」
有紀の一言に、正嗣はがっくりと項垂れた。
「それなりに普通の名称なら何でもいいけどな」
「義彦、そんな事言わないで考えて下さいよ」
しかし、彼は悠斗の言葉にも、面倒そうな表情をするだけだ。
「札幌の学園なんだし雪とか冬とか入れたいよね? そう思わないかな?」
有紀に突然話しを振られた愛菜と吹雪。
何と答えていいかわからない二人。
少し微妙な顔になった。
「雪ねぇ? コナユキゲッカ、セッカロウカ、ハクセツユウシャ、セッシュントウトウ、トウムセツゲツ・・・」
面倒そうな顔をしていた義彦。
突然立て続けに案を出した。
その場にいた五人。
咄嗟に反応する事も出来ずに、驚いている。
「義彦、よくそんなにポンポン出てきましたね?」
「何となくだな。頭に浮かんだ言葉を雪とか冬とかに繋げてみた。雪も冬も入らないけど、ユウモウダンガンとか? シッパクセイラ、ギンビャクリュウセイ、ハクギンロウガ・・・」
「義彦兄様って実は妄想激しかったりするんでしょうか?」
「いや、そんな事はないと思うが。普通だと思うけど? どうなんだろうか?」
「どうなんだろうかと私に聞かれても困りますけど」
心底、返答に困ったように困惑顔の吹雪。
「そうだよな」
「でも、セッカって言葉の響きなんか良くないですか?」
五人に順に視線を向けながら、そう答えたのは愛菜。
「セッカ・・セッカスズラン・・セッカヒメユリ・・・」
呟くような有紀の言葉に、反応したのは正嗣。
「人の名前みたいだな?」
「言われてみるとそうね。ギンセツトウカ・・・。いまいちだなぁ」
「それじゃ百花繚乱じゃなくてセッカリョウランとか?」
しかし、悠斗の案には、五人とも嫌そうに渋い顔になった。
「ギンカトウセツとか?」
「何となく響きがいい感じな気もしますね。愛菜はどう思う?」
義彦の言葉に、肯定的な意見の悠斗。
彼に問われた愛菜。
考えながら、何度も呟いてみる。
「響き。うん、いいと思う」
正嗣と有紀、吹雪も満更でもない感じの表情。
「それで義彦兄様、漢字で書くとすればどんな字を考えているんですか?」
「漢字か。そうだな」
立ち上がった義彦。
机の上のルーズリーフの袋。
そこから一枚引き抜いた。
更に、鞄の中に入れっぱなしの筆箱。
そこからシャープペンシルを取り出す。
時折、考えているような素振り。
ルーズリーフに目一杯大きく文字を書いてく義彦。
書き終わり、五人に見せたルーズリーフ。
そこにこれでもかとでかでかと書かれた漢字。
【銀花橙雪(ギンカトウセツ)】とルーズリーフには漢字とフリガナ付きで記入されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます