第78☆あこと勇也の妖怪事件簿~河童の怪~プロット
2017年2月10日金曜日 あずさ ゆみ
このお話は、バレンタインのプレゼントをめぐっての騒動を描く、神霊と主人公たちの友情物語で、河童と仲良くなる児童文学です。
*登場人物*
☆多田 あこ(ただ あこ・女・小学5年生)神霊の見える女の子。早くに両親を亡くし、叔父の稲垣 一にひきとられる。声楽教師の今は亡き祖母に浄化の歌を教わってきた。それによって穢れを払うことができる。長所:悲しいほどやさしい。短所:パーフェクトすぎる。
☆田中 勇也(たなか ゆうや・男・小学5年生)あこのクラスメイト。長所:面倒見がいい。短所:かっこよすぎる。
☆小野辺 ユウコ(おのべ ゆうこ・女・小学五年生)隣のクラスの女子。長所:育ちが良い。短所:頭の回転が速すぎる。
☆河童(かっぱ・オスとメスのつがい・長寿)河童池の水神。長所:二匹仲良し。短所:食い意地が張っている。
☆イナリー(推定男・長寿)田中家で奉っている稲荷大明神。農耕神。長所:比較的おだやか。短所:怒ると怖い。
☆稲垣 一(いながき はじめ・男・37歳)あこの叔父で未成年後見人。あこと一緒に住む。有名な書道家。オシャレがすき。
*捕捉*
★天:時はバレンタインデー
★地:ところは関東のどこかにある印南町(架空の街)山と草原と川に恵まれ空気がおいしい。商業街が場違いに発展していて隣町との境界線は高級住宅街に面している。学区内の小学校は商業街を突っ切る場所にあるため、主人公たちは交通安全と教育的問題で、隣町の西第一小学校に通う。
*物語*
20✖✖年、2月14日、バレンタインデー。
その日の朝に地震が起こり、水神を祀った河童池のお社が壊れ、つがいの片割れが石碑の下敷きになってしまったので、河童が多田 あこ(小5)のもとへ助けを求めに来た。理由はあこには神霊の存在が見えるからである。あこには「幻視・幻聴」という自覚があり、他人には内緒にしていた。あこは河童の声を聞くがわけがわからず、いつもより早く家をでた。
あこは、毎日一緒に待ち合わせをして、稲荷神社にお参りに行く田中 勇也(小5・超モテモテ)には気を許していた。
それは勇也の家が奉っている神社が好きだったからだった。あこは本尊である稲荷大明神をイナリーと呼び、心のよりどころとしていた。理由はまだ引っ越してきたばかりで、未成年後見人の稲垣 一(37)にもまだまだ遠慮があったからだ。
いつも通りに勇也と登校していたあこだったが、この日は勇也にアタックをかけてくる女子が道端に何人もいて、それをいちいち受け付け、あまつさえ道の途中でプレゼントの中身をあけ、食べてしまう勇也だった。あこにもおすそ分けが来たが、勇也の誠意のなさにびっくりした。そしてくれたものの中に洋酒入りのチョコレートがあるのに気づき、はっとしてみると勇也が酔っぱらっていた。
どうしようもなくて、心の中でイナリーに助けを求めると、なぜかピンクの河童が現れ、勇也の上に局地的に泥水が降ってきた。一瞬河童のせいだと思って怒鳴りそうになるあこだったが、これでも神様なんだと思い直して河童を拝むと、河童はあこの手にあったお菓子たちと一緒に消えた。
なんとか動けるようになった勇也に水を買ってやり、そのままでは面倒なので、通りかかった「西第一小学校前」のバスに乗ってしまった。しかしバスは門の前を通り過ぎ、隣町のバス車庫へ向けて進んでいくのだった。とっさに仮病で降ろしてもらったあこたち。そこは見知らぬ地区だった。
しかし実際は同じ小学校へ通っている子供たちが多く、そのうちの小野辺ユウコ(小5)という隣のクラスの女子の家で休ませてもらえることになった。
そこで酔いを醒ます勇也だったが、まだ意識がはっきりせず、『あこからのチョコがほしい』とうっかりもらした。引っ越してきたばかりで人との付き合いに自信のないあこは、はっきり応えることができなかった。そのうち、その家の庭先にまたピンクの河童が現れて、あこが見つけると嬉しそうに走り寄り、窓ガラスに激突して消えてしまった。そのうち酔いのさめきった勇也が、あこの能力について知り、河童のことをきくと「河童が鳴くと水害が起こる」という印南町の伝説を教えてくれた。あこは自分を信じてくれた勇也に今まで以上の好意を寄せた。いろいろ考えたが、放課後になったら河童池に行くことにし、二人は遅刻しても登校しようと決め、時間差で小野辺家を出ることにした。学校へは、ユウコの母が黙って連絡を入れておいてくれたのだが、お酒入りのチョコレートについては言いたいことがあるようだった。あことしては、プレゼントをくれた女子の気持ちを考えると、おおげさに取りざたされてはかわいそうだったし、今後、学校でバレンタイン自体が禁止になっても申し訳ない(第一勇也はこれっポッチも悪くないのだ)と思った。
勇也が出てからちょうど十分経った頃、ユウコの母に地図をもらい、再び登校し始めるあこだったが、学校では大変なことが起こっていた。一、二時限目の体育のとき、先生に遅刻を謝りに行ったあこだったが、授業が終わり女子が教室で着替えているとき事件が発覚した。なんと女子の鞄からチョコレートが包みごと消えていたのだ。遅刻の罰として体育の後片付けをしていて遅れて入って来たあこが疑われた。そしてあこの机から見知らぬチョコが出てきて非難は一層高まった。そのときピンクの河童がすごい勢いで机の中のチョコレートを口に放りこんで、巨大化したのが発見された。そして河童はあっさりと姿をくらませたのだった。
ざわめく教室に、廊下を疾駆する勇也の呼びかけが聞こえた。どうやら、学校中のチョコレートが荒らされているらしかった。ところどころで散見されるチョコレートを追い、河童池にたどり着いたあこたちは、破壊されたお社のそばに、倒れた石碑の下敷きになった河童を見つけた。そして、心配するように盗んできたチョコレートを運んでくるピンクの河童を見て、河童は仲間を助けたかったのだ、と解釈し、石碑をてこでどけて池の中に落とした。
しかし、河童はたすからず、やけになって一斉に勇也にプレゼントするためだったチョコレートを、河童池にみんな投げ入れてしまう。勇也が言うには、真心からの贈りものには目に見えないパワーがあるのだそうだ。直後にあこのみならず女子たち含め生徒たち全員の机の中にチョコレートを入れておいたという江崎なおみ(国語教師)の署名があるのを指摘する女子がいて、あこの疑いは完全に晴れ、小野辺ユウコが代表して、疑ったことを詫びるのだった。
けがをした河童は完全に死んでいたが、イナリーが遺骸をくわえてきて、チョコレートのおかげで清められた池に沈めた。みんなの願いがこもった供物に、回復した河童はつがいで水かきを叩き合って喜びの踊りを踊った。
そして勇也は残っていた江崎先生からのチョコレートを二つに割り、真っ赤になりながらあこに贈るのだった。一つのものを半分こにして食べるのは、二人がもっと仲良くなれるようにとの、おまじないだった。
END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます