第73話:「まささん、王さまを語る」の巻

 まささんはねねさんに語ります。


「そのひとが自分の願い亊を叶えたい時、どんな行動を採るかによって分かれるんですよ」


「願い亊を叶えたい時、ですか?」


「はい」


 まささんは答えます。


「まず王さまになりたいひとはですね、願い事を叶えたい時、自分以外を動かそうとするんです」


「自分以外を、ですか」


「そうですね。わかりやすく例えると、レストランに行って初めにお冷やが出てこない時、店員さんに持ってこいって言っちゃうのが王さまになりたいひとです」


「ふんふん」


「これをさらにふたつに分けると、片方はその店員さんに『お願い』するけど、もう片方は店員さんに『命令』するんですね。そして、不思議に感じるひともいるかもですが、日本の女性は店員さんに『命令』するひとのほうが好きなんですよ」


「なんでですか? それて、随分横柄な態度だと思いますよ」


「横柄……って、難しい言葉知ってますね」


「常識です。まささんの言う『命令するひと』て、要するに『オイ、持てこい!』てお店のひとに言ちゃうひとのことでしょ? それて、凄く嫌なひとに思えます。なんでそういう変なひとのほうが人気出るのですか? わたしにはわかりません」


「普通に聞けば、たいていの日本女性もそういうのは嫌だって言いますよ」


「?」


「でもですね、いざ一緒に行動してるとそうじゃなくなるんです」


「それはどういうことですか?」


「想像してみてください。ねねさんがそういうひととデートしてるとします。そしたら、そのひとの見せる横柄さは自分以外に向けられることが多くなるわけですね。それってつまり、彼が『命令に従わせる』ひとが、自分のためにも動いてるってことになるわけです。相方が店員さんに『水持ってこい!』っていう態度は、そのまま自分のメリットにもなる。だから、そういうひとの横柄さは、女性にとって『男らしさ』『力強さ』『頼りがい』っていうプラスの印象に繋がるんですよ」


「なるほど」


「そして店員さんにお願いするひとの場合、女性の目から見たらさっきのとは逆に『女々しい』『ひ弱だ』『頼りがいがない』という印象を与えるわけです。女性っていう生き物は、基本的に優しいひとには惹かれないんですよ。これは生物学的実験できっちり証明されてます。乱暴な物言いで自信満々な男性と、丁寧な物言いで下手に話す男性。そのどちらの言葉を女性が信用するかについて、欧米の学者がテストした結果が発表されてたはずですよ」


「そうなんですか」


「で、日本の女性は、そういった『女性の本質』に素直な生き物なんでしょうね。別に悪いこととは思いませんよ」

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