#028-第3話「和服ロリータ」

「はぁ……」


 なんか、神の威厳とか、感じられなくなってきた。


「何かの、人間よ?」

「あ、いえ、何でもありません」

「ちょっとハルちゃん、このツクヨミには、ハルちゃんの心の声が聞こえてるってこと?」


 姉が俺のシャツのすそを引っ張る。


「そうじゃ。お主、冬美と申すのか」

「そうですけど、どうしてわかったんですか」

「頭の上に名前が出ておる。HPとMPのゲージも見えておるぞ」

「へ? HPとMP?」


 俺と姉は思わず互いの頭上を見た。


「冗談じゃ」


 冗談……言うのか。


 そんなことを思う俺を尻目に、ツクヨミは続けた。


「いんたーねっつゲームじゃあるまいし。わらわはこれでも女神じゃ。人間の名前くらいすぐにわかる」


 名前を書いたら死んじゃうノートのお話を、ふと思い出した。ツクヨミはそんな俺には構わず、姉の方に一歩近づいた。


「それで冬美よ、お主の心の声は妾には見えぬ。恐らく新月生まれなのじゃろうな」

「新月だったかどうかはわかりませんけど。ところで、何の御用なんですか」


 姉、すっかりこの状況に馴染んでいる。すごい。姉、すごい。


「おっと、すまぬがちょこっとROMじゃ」


 ROMとか!? ていうか、あなた今、話の主役なんですけど。主役がROMらないでください!


「いや、タカマガハラ知恵袋に回答があったのでな。どれどれ」


 金色のヒトガタはなにやらぶつぶつ呟いた。


 すると、その金色の輝きが一際強くなった。俺と姉は(どさくさにまぎれて)抱き合うようにして目を逸らす。


 その光が弱まったのを見計らって、そのヒトガタのいた場所を見ると……。


「わ、ロリ……!?」


 姉が頓狂とんきょうな声を上げた。俺はもう言葉もない。姉はその姿にずいと歩み寄って追及した。


「なんで日本の古式ゆかしい神様が、それもツクヨミノミコトファッションなの!?」

「お、おかしいかのっ!?」

「おかしいでしょ、奈良時代に作られた日本書紀、そうなれば当然その時代のファッションでしょ!?」

「ううっ、この時代に顕現けんげんするなら絶対このファッションだって、知恵袋にあったのじゃ。もう、べすとあんさーをつけてしまったのじゃ……」


 なんか変だよツクヨミ様。なんか涙目になってるし。


 あ、和ロリファッションに目を奪われていたが、さすがは神様である。大変ロリロリしくて、まるでお人形さんのような可愛さである。理想の二次元ロリが三次元に具現化するとこうなるのかもしれない。髪は満月の色――即ち黄金で、目の色は赤だった。肌はもう、雪のように白い。驚きの白さである。顔立ちもスタイルも、もはや日本人ぽさの欠片もない。いや、神様だからいいのか? あれ、でも日本の神様だよな?


「お、お主もおかしいと思うかの、ハルくんとやら」

「神様にまでハルくん!?」


 驚愕する俺。そんな俺に、ツクヨミはずずいと近付いてくる。


「で、どうなのじゃ、ハルくん」

「あ、いやぁ、自分ロリ嗜好ないのでちょっとよくわかんないっすね……」


 無難な回答に留めおく。まぁ、神様であることをさっぴけば、大変かわいいのである。


「なぜ神様であることをさっぴいたのじゃ?」

「……心の声が筒抜けというのは、実に面倒なもんですね」

「聞こえるのじゃから仕方ないじゃろ?」


 はぁ。


 俺はとりあえず溜息をいたのだった。

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