#028-第2話「妾は月読」

 どうする、姉に見せるべきか、否か――!?


 しかし、俺が決断する前に、ドアが開いて姉が顔を覗かせた。手にはタオルがあり、髪は濡れていた。風呂上りのようだった。その姉が驚愕の表情で俺の頭の上を見つめていた。


「ハルちゃん、ミミ……!」

「知ってる。でもとりあえず今は窓の方見て!」

「窓……ひっ!?」


 良かった、姉にも見えるんだ。ってそうじゃなくて。


「なにこれ、なにがどうなってどういう原理!?」


 取り乱す姉。普通の反応である。


ツクヨミ自ら登場とは、まったく想定外だよ!』


 ざまみろ! なんか気分いいわ! 


 ……ていうかこれがツクヨミかぁ!


 そうこうしている間に、その金色のヒトガタはスゥッと室内に入ってきた。間近にしてみると、身長百四十センチ程度と、意外と、いや、かなり小さい。そのぼんやりとしたシルエットからは、男女の区別はつけられない。


 身構える俺たちに、その金色のヒトガタは小さく頭を下げた。


「驚かせてすまぬ、人間よ」


 その声は一言で言うとロリ……少女のものだった。もっと簡潔明瞭に表すなら、ロリ萌えボイスだった。


「人間の姿は久しくとっておらぬものでな、ニンゲン・トランスフォーム、略してニトフの方法は目下検索中なのじゃ。タカマガハラ知恵袋で訊いてはみたのじゃが、もはや誰も覚えておらなくての。仕方ないので、この金ピカ姿で失礼する。あ、あと愚兄にはしばらく黙っていてもらうから安心せい」

『むぐぐ……』


 謎の声が呻いた。愚兄というのは、やはりこの謎の声のことか。


 ところで、タカマガハラ知恵袋?


「人間の発明は便利での。いんたーねっつという技術を輸入させてもらったのじゃ。サービスもパク……参考にさせてもらっておるのじゃ」

「心を読まれるのは結構なんですが、今、パクリって言いませんでした?」

「お主、なかなか鋭い質問をするのじゃな。パクリとは言ってはおらん。言いかけただけじゃ」


 ケモミミ神のみならず、月読命ツクヨミノミコトまで、結構トリッキーな……。


「何か言ったか、お主」

「いえ別に!」

「ほほう」


 金色のヒトガタは俺の方へと一歩近付いた。俺はその分下がる。そこで姉が俺の隣に進み出て、口を開いた。


「それで、えーと」

「おお、すまぬすまぬ。わらわツクヨミ。この世界の夜を支配する神じゃ。ちなみに妾の姉はアマテラスと言っての、昼を支配する神じゃよ。姉は副業として、高天原タカマガハラの管理人さんもしておるのじゃ」

「副業……」


 姉はぽかんと呟いた。


「副業で務まるものなんですか、高天原の管理人なんて」

「妾ら神は基本的に年を取らぬからの。いまや高天原は、ただの遊びにん巣窟そうくつなのじゃ」


 ツクヨミは溜息を吐くように、そんなことを言った。

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