#018-第4話「いざ、円山動物園」

 そして七月最終日である。社会人の皆様にとっては通常営業日ではあるが、俺たちT高校生にとっては、ようやく真の夏休みに突入した日である。


 その日は曇天ではあったが、気温は朝から急上昇、あっという間に三十度に迫るところまで到達していた。既に何度か言っているが、ここは北海道札幌市である。何もそこまで暑くならんでも、という思いは毎年抱く。しかし、北海道の夏はとても短い。海水浴シーズンも、せいぜいがお盆前までだ。実質「夏らしい」のは、七月末から八月上旬と言ったところで、それ以後は残暑と表現するのが妥当なところだ。


 今日の目的地は、円山まるやま動物園である。北海道の動物園というと、あの旭山動物園がまず思い浮かぶかもしれないが、この円山動物園だって、かなりの規模なのだ。札幌市民的には、動物園といえばこの円山動物園を指し示しているわけである。


 大通駅にて地下鉄南北線から東西線へ乗り換え、そこから円山公園駅に降り立つ。我が家から実に一時間もかかる行程である。気軽に行こうと言うのには、少々かったるい距離である。


 円山公園駅に着くと、そこには既にリオが待っていた。白い半袖ワンピースに、麦藁帽子、白いサンダル……完璧である。何がと問うなかれ。とにかく完璧なのである。そしてその手には、なにやら大きなバスケットを持っていた。


「おはよ♡」

「リオ、まだ九時半じゃん」


 約束の時間より三十分も早い。リオはニコニコしていた。


「ハルくん、いつも来るの早いから、今日は先回りしてみました」

「ま、まぁ、いいけど。荷物持つよ」

「あ、うん。お願いします」


 バスケットを受け取り、駅構内を通ってバス停へと向かう。


「散歩がてら歩いて行かない?」

「リオ、疲れない?」

「だいじょうぶ。何回も歩いてるから」

「そっか。じゃあ歩こう」


 この蒸し暑い中を歩くのか。確か十五分くらいの距離だったなぁ。などと思いつつ、少しテンションが下がる。無論、顔には出さない。我慢も美徳なのだ。


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