#014-第9話「……どうしたい?」

「……そ、そうだね」


 第一、このまま二人っきりでこの狭い空間にいたら、どうなっちゃうのかわからない。俺はリオが好きだし、リオだって俺を好きだ。そしてリオは抜群に可愛い。部屋には俺がさっきまで寝ていたベッドだってある。よからぬ方向に本能が暴走する危険性は、十分過ぎるほどにあった。現に今だって、こんな風に暴走しかけている。でも、暴走の末に、そういう行為に及んでしまうということは、男のプライドにかけても避けたかった。この辺、ウブな男子高校生の理性と本能のせめぎ合いである。強調するが、俺は女子の取り扱いは勿論、男子との関係だってまともに構築できない類の人種だ。ウブという主張に対する異議は認めない。


 ――そして(これは俺の願望だが)、リオだって似たような思考で「そうだね」と言ったと思うのだ。ネットで「女心」的なものを調べた所、女子だって、そっちの(つまり性的な)願望がないわけではないと知ったのだ。もっとも、リオの場合はかなり大胆なアプローチをしてきているから、間違いなくその気があるのだろうが。


 俺たちはそそくさと居間へと移動して、リオの差し出してきたDVDをプレイヤーにセットし、テレビの真正面にあるソファに並んで座った。「再生」ボタンを押しかけて、俺はリオを見る。


「飲み物、いる?」

「三話終わったらちょうどお昼だから、我慢しようかな」


 リオはそう言ったが、俺はもう既に立ち上がっていた。リオと俺の分の麦茶を用意して、テーブルの方へと運搬する。


「ありがと♡」


 リオはニコッと笑うと、麦茶を半分ほど一気に飲んでしまう。俺もつられて飲んだ。


「実は喉が渇いてたんだ」

「き、緊張したもんな、さっき」

「うん」


 そして「再生」。始まったのは借りていた小説(VRMMOでデスゲームのアレだ)のアニメである。リオは食い入るように画面を見つめながら、俺の左手を強く握り締めていた。俺は画面に六割、リオに四割程度の注意を向け……いや、逆だ。それどころか九割リオだったような気もする。仕方ないだろう、可愛いんだから。


 気付けばリオは俺にぴったりと身体の側面を接触させていた。いつの間にかにじり寄ってきていたらしい。


 リオのお尻(の側面)が、俺の尻(の側面)に触れている……。


 そう気付いた瞬間から、俺の意識はもうリオにしか向かなくなっていた。全神経を尻(の側面)に集中させ、リオの身体(ていうかお尻)を感じようと意識する。


「もう、ハルくん。どこ見てるの」


 ハッ。


 気付けば俺は瞬きすらせずに、リオの太腿から膝を見つめていた。視線が吸い寄せられるのだ。どうしようもなく。


「リ、リオ……その」


 俺の右手が浮き上がる。リオはテーブルの上に佇んでいたリモコンを左手で取り上げると「一時停止」を押した。そして、その左手で、俺の右手を握った。両手を握り合った状態で、俺たちは上半身をお互いに向け合っていた。


「ハルくん……どうしたい?」



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