§02 高校一年生編

#007 「耳」が「ミミ」に変わる時

#007-第1話「らいとのべる?」

 二〇一三年五月二十五日、高校生活最初の中間テストを二日後に控えた土曜日である。父は週をまたいで出張、母は妹(つまり、俺の叔母さん)と二泊三日の旅行にでかけていた。


「晩御飯まで頂いてしまって、ありがとうございます」


 リオは並べられたオムライスを前にして、小さく頭を下げた。リオの隣に座っている冴羅も、同じようにお礼を言った。


「ごめんね、オムライスなんかで。ウチにあんまり食材なかったの」


 姉がエプロンを外しながら言う。リオと冴羅は同時に「いえいえ、とんでもないです」と応じた。そのシンクロぶりが可笑しくて、姉と俺は短く笑った。


 今日は朝からリオと一緒に過ごしている。テスト前の集中勉強期間として、今日明日と猛勉強をするためである。ちなみに今日の冴羅はオマケだ。学校の試験も昨日終わったらしい。冴羅は姉に非常によくなついており、勉強からプライベートまでアレコレと相談する仲なのだそうだ。


 冴羅は現在、中学二年生だ。聞けば成績は優秀で、札幌市最難関のM高校への進学も確実視されているのだとか。冴羅もまた、中学一年の最初から、正式に姉の生徒となっていた。


 そんな文武両道の美少女にも一つだけ弱点があった。それはバストだ。つまり、おっぱいのサイズだ。年齢的にはまだまだ成長の余地があるとはいえ、現時点ではまっ平ら。「まな板」と表現するのが実にしっくりくるシルエットだった。そこだけはリオには永久に勝てそうにないなと俺は常々思っている。


 とはいえ、リオのそれも、良く言っても標準サイズといったところだ。いや、待てよ? 俺は姉の巨乳を見慣れているから、リオのは案外大きいのかもしれない。


 三人の胸辺りに視線を彷徨わせながら、俺はオムライスを平らげる。姉の料理は本当に美味い。率直に言えば、一定確率で爆弾が仕込まれている母の料理よりも美味いし、安心感がある。


 女子三人はわいわいと俺の知識の及ばない話題で盛り上がっていた。俺は何とはなしに、美女から美少女まで取り揃ったその光景を眺めて過ごしていた。真に至福の時である。


 実はこの時に初めて知ったのだが、リオは現在ライトノベルを読むことにハマっているのだと言う。そのアニメも昨年の深夜に放送されていたらしい。なんでもゲームの仮想空間に閉じ込められて、脱出するためにデスゲームを繰り広げなければならないのだとか。


「ハルくんはラノベ読まないの? 貸してあげようか?」

「小説かー」


 正直、あまり関心はないし、紙の小説なんて殆ど読んだ記憶がない。ネットの小説サイトをたまに覗く程度だ。だが、今後、リオとの話題を増やすためならば……。


 俺は不純な考えを頭に浮かべつつ、いつの間にか姉の方に視線を動かしていた。



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