#001-第3話「ネコランジェリーで検索!」

 姉は、濃灰色のものを着ていた。少なくとも昨夜までは間違いなく、ちゃんとした修道服だった。だが、いまや、そのスカート部分は破れてめくれ上がり、胸元も緩み、相当にあられもない姿になっていた。


 元が修道服だけに、その落差ギャップがすごい。


 俺の両目が、大きく露出したフトモモや胸元を激写していく。大きなおっぱいに、引き締まっているが程よく女性的なフトモモ、(酒の力を借りた)どこか挑発的な視線……というトリプルコンボに、はもう、ウナギノボリである!


 ……、落ち着こうな? な?


 スキル・精神統一でしずめている俺を見ながら、「ハルちゃん」と、姉は必要以上に湿り気を帯びた声音で言う。


「シスター姿のお姉ちゃんにムラっときてるんでしょ、わかってるわよ♡」


 きてません。きちゃいけない状況でしょ、これ。


 そんなことを思いながら、姉の周辺に視線を彷徨さまよわせつつ、俺は少し大きな声で言った。


「もうッ! まだアルコール抜けてないでしょ、姉ちゃん」

「さっきまで飲んでたんだから、当たり前じゃない!」


 逆ギレされた……。


 俺は次なる言葉を見失う。


 ま、まぁ、こんな風になっていることを差し引いても、姉は美人だ。そのうえ、昨年までは、正真正銘のシスターだったのである。だが、だからと言って、実の姉にムラっとなんてくるはずがないのである。


 …………。


 すみません、嘘つきました。ごめんなさい。


 正直に言うと、俺と姉には――。そのこそが、これからの話の中核になっていくので、もう少し待って欲しい。


 俺はこの時点でそれ相応に取り乱してはいた。だがまだ理性を失ってはいなかった。俺の理性防衛隊は、まだ、耐えられる! ……と、思いたい。


 この三重トリプルとも四重クアドロプルとも言える誘惑コンボに耐えられるのは、鼻をつくのおかげ、なのだが。この世で最も苦手な臭いに救われるとは、なんだか胸中複雑である。


 俺は首を振り、姉を見た。


「姉ちゃん!」

「ふぁい♡」

はぁと、じゃなくて!」


 ほだされそうになるのを危うく回避して、俺は姉の(大きな)胸を指さした。


「その服着替えて! 着てきた服に! 大至急!」


 取り繕うように、逃げるように、俺は姉から目を逸らす。しかし、逸らした先には、万梨阿先輩の尊い寝顔があった。そして俺の視線は、自動的に(←重要)先輩の白いボディの観察を開始してしまう。


 横向きに寝ている万梨阿先輩は、ネコっぽいランジェリー(黒)を装備なされていた。具体的には、ブラ(黒)の胸の谷間部分には「ネコ型」の切り抜きがあり、華麗なる紐パン(黒)のお尻にはピンク色の「ネコの肉球」がプリントされており、その他……とにかくなんだか色々とネコっぽいデザインなのだ。ああもう、「ネコランジェリー」あたりのワードで画像検索してみると良いと思う。


 出てきたか? うん、そう、それだ。


 よし、その検索結果の画面は閉じるんだ、今すぐ。


 ……では、説明を続けよう。


 先輩は着痩せするタイプらしく、ブラ(黒)のネコ型はなんだかふくよかだった。当然、その内側にある谷間もまた、ふんわりとしていて、かつ、まるで物理的に吸い込め……ごほん、吸い込まれそうなほど深い。それでも姉のよりは少し控え目に見えるから、Eカップってところだろうか。


 もっとも、Eもあれば色々と必要十分である。きっとできる。


 ……いやいや、ちょっと待て。


 れつつ妄想している場合じゃない。


『もっと目に焼きつけておきなよぉ。絶品じゃないかぁ、Eカップおっぱい♡』


 だまらっしゃい、謎の声。それと、おっぱい言うな。


 俺の身体は、先輩の白く美しい四肢でがっちりとホールドされていたため、そこからの脱出には五分以上を費やした。まるで知恵の輪そのものになった気分だった。


 もちろん、抜け出すためには先輩の肢体に触れなければならなかった。当然、太ももやお尻、時としておっぱいなどに。いや、だがこれはやむを得ないのだ。仕方ないのだ。決して事故を装って、感触を楽しんだりしているわけではないのだ!


 ちなみに破けてはだけた修道服の姉は、左膝を立てたこれみよがし的なパンチラ姿勢で座り、助けるでもなくただジト目で俺の独り格闘戦ドッグファイトの様子を眺めていた。


「姉ちゃん、先輩の服持ってきてよ」


 俺は若干イラっとしながら言った。だが、姉は唇を尖らせて肩をすくめる。


「えー、なんであたしが?」

「だって先輩が脱いでるのは姉ちゃんのせいでしょ!」

「えー、冬美ふゆみおぼえてなーい」

「姉ちゃん、酒酔い侵入禁止にするよ」

「……お姉ちゃんの服をこんなにして、このきわどい純白パンツにも湿った荒い息を吹きかけながらじっくり舐め回すように見ていたくせに、酷いよ、ハルちゃん」


 えーと、姉よ。何を言っているのかな。


 俺は頬を指で引っ掻いた。その時、姉は、不意ににっこりとほほ笑んだ。


 あ……ふぅ。


 あぶねぇ、鼻血を出すところだった……。


 思わず鼻を押さえている俺に、姉が微笑を浮かべつつ問う。 


「ね、正直、ムラっとしてたでしょ♡」

「しませんよ、していません」


 俺は半ば意地になって首を振った。


「えー、でもだってさっきがさぁ」


 姉が爆弾発言をしようとしたその矢先、先輩がパッチリと目を開けた。その明るい茶色の視線は、俺の目をまっすぐに射抜いていた。


 えーっと、その目は……。あのぅ?

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