#001-第4話「はだけたシスター×下着のセンパイ」

「あれ? なんで私……」


 先輩は目をパチクリさせた後、「えっ」と自分の姿に目をやった。


「ま、まさか春人はるとくん……?」


 そして俺を見る。


 先輩、なにゆえ俺をそんなあわれむような目で見るのでしょう?


「ちょっとぉ、万梨阿まりあちゃんだっけ?」


 姉が(若干ろれつの回っていない口調で)先輩の名を呼んだ。その時初めて、先輩は姉の存在に気がついた、もとい、思い出したようだった。


「ひぇっ」

「人の顔見て『ひぇっ』とは何よ、『ひぇっ』とは。昨夜の事覚えてないわけ? あんた自分で人のビールがばっがば飲んで、勝手に酔っ払って服脱いで寝こけたんでしょうが」


 ……そうなの?


 ……そうだっけ?


 微妙に疑問符が浮かんできたが、俺は黙殺することにした。確かになんだかそんな気もする。


 待てよ。そもそも何で昨夜の出来事がこんなに曖昧なんだ、俺。やはり、和ロリか? あのロリ神様のシワザなのか?


 悩みはしたが、答えは出そうにもない。あのロリ神様が何かやらかしたような気がしなくもないが――。


 「とかって何?」とかいう声も聞こえてきている気がするが、とりあえず今は「ロリ神様」であるということだけ記憶に残していただければ十分だ。いずれ出てくる。具体的にはエピソード28だ。……ネタバレしても良いというのなら、覗いてきてもいいぞ。


 メタい話はさておいて。


 ともかく思い出せないものは仕方がないので、今はこの美しきパンチラシスターと、見目麗しきランジェリー先輩のやりとりを、主に視覚で分析しようと考えることにする。嗅覚的には地獄だからだ。……敢えて言おう、クサいのである、と!

 

『いやぁ、万梨阿ちゃんは美人だなぁ。ムラムラくるよねぇ!』


 黙ってろと言っている、謎の声。


『昨夜はお姉さんがいなければ、かーなーり、おいしい思いが出来たと思うよ。あぁ、残念だった。実に残念だよ』


 先輩とは出会ってまだ一週間しか経ってないのに、いきなりおいしい思いなんてあるものか。何を言っているんだ、謎の声。それに俺には――。


『まぁ、そっちの件は承知してるけどさぁ。でもほら、酔った勢いでとかさ』


 先輩と姉はともかく、俺は未成年だ。当然、一滴も飲んでいない。


 誰にともなく弁明した、その時である。


「お姉様、お願いです!」


 大きな声に驚いてその声の方をうかがうと、先輩がランジェリー姿のまま、俺の布団の上で土下座をしていた。俺は思わず立ち上がり、片足を上げた珍妙な姿勢で固まった。


 先輩はその白皙はくせきの背中を俺の眼下に惜しげもなく晒し、女性らしい曲線を描く腰からお尻のラインをこれでもかと見せつけていた。想像してみて欲しい。下着姿の女性が平伏しているその姿を。何処を見ても曲線。精緻で完璧なる曲線である。お尻を構成する二つの丸いパーツまで如実に晒し出されているわけである。俺の理性防衛隊の何割かは、その美麗なる背面から臀部にかけてのラインによって討ち死にしてしまったようだった。


 ――だが、まだだ。まだ、終わらんよ!


 姉はと見ると、左膝を立てて、右足を伸ばして座ったポーズのまま(右足のフトモモから下は全露出である)、顎を上げて先輩を見下ろしていた。その目つきの鋭さたるや、もはや獲物を見つけた猛禽類である。醸し出すオーラによる圧力プレッシャーがハンパない。


 その眼力に押された先輩は、布団に頭をこすり付けながら言う。


「昨夜見たものは、どうかご内密に!」

「そりゃー、別に。あたしも、見慣れてるし」


 確かに姉よ、あなたは見慣れておりますよね。


 俺はいまだに自分でもギョッとなるというのに。恐るべきは、このこじらせ系ブラコンなり。


「ハルちゃんもあんたも、どっちも悪魔きってわけだし」

「あ、あの、姉ちゃん? あれは悪魔じゃなくて……」

「そうなんです、悪魔憑きなんです!」

「ですよね。って、え? ちょっと先輩?」

「囁くんです、私の中でが」


 ちょ、先輩も謎の声が聞こえるの?


 ――いや、そうか。そりゃ聞こえるか。だもんな。


 「謎の声」とか「悪魔憑き」とかいう不思議ワードがナチュラルに出てきているが、これも後々イヤというほど説明するので、今はスルーしてくれると助かる。


 そんなことを考えている俺をよそに、先輩は土下座のまま続けた。


「満月が近付くと、どうしてもに逆らえなくなって」

「それで満月の昨夜、あたしの可愛い弟君を喰べようとしたわけね?」

「はい……」

「まぁ、あのしつこいのがやったってんなら仕方ないわね」


 姉は立ち上がる。図らずも深いスリットが入ってしまった修道服からぬるっとはみ出ているフトモモに、どうしても目が行ってしまう。未だアルコールが抜け切っていないと思われる姉は、その推定Fカップのバストを(主に俺に)見せ付けるように胸をらして、高らかに宣言した。


「この冬美お姉さんに任せなさい。二人まとめてはらっちゃうぞ!」

「お願いします! お姉様!」


 先輩は「ははぁー!!」と言わんばかりに平身低頭し、叫ぶようにして応じたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます