第10話 自責の念と。


一矢は、言った。今日はお客人が多過ぎて立て込んでて。。。だから残念だよ。。。本当は。。。憂ちゃんとだけ、会いたかったんだ。。。


でも高崎のやつ。。。憂ちゃんだけうちにご招待するとか、無理だと分かってるから、だからたくさん招待することにしたんだよ。


あいつ。。。珍しく一矢は悔しそうな顔を見せた。いつも余裕で、大勢の女性を身の回りに侍らせている一矢にこんな一面があるなんて。


それでも、むしろ憂は、一矢のことを見損ないはしても、好きにはなれない自分がいた。


キスされてしまった。。。しかもファーストキス。。。


こんなふうに。。。あっけなく。。。。


自分のせいだ。。。と憂は自分を責めた。兄がいつも守ってくれたのに、自分がうっかりこんな所に出かけて来てしまったから。。。


赤い頬をしたままで、外に出たら、他の人に、何があったか知られてしまうかも。。。。もう一度ビーズのバッグを開けて鏡を見たかった。でも出来ない。


憂は、もう帰りたいです、というのを堪えて、黙って一矢に引かれるまま、桃の花の林を抜けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る