第3話 旅団所属

「エルフだエルフだ。逃げないと逃げないと」


 少年は、酷く取り乱していた。と言うのも、少年は、過去にエルフにあったことがあった。あの森とは別の里だ。そこで少年はエルフの怒りを買った。喧嘩を売った覚えもないが、異種族と言うのはそういうものなのだ。言葉は通じるが、想いは通じない。そんなもの。正直、幾度思い出しても、一体自分の何がいけなかったのか少年にはわからない。その時は、当時のチームメンバーの顔に免じてゆるしてもらった。

 因みに、先程の魔の森のエルフにとどめをささなかったのは、単純に考えが無かっただけである。とにかく逃げることしか頭に無かったのだ。


 鞄もお金も投げ出して逃げたが、仕方がない。回収するつもりも無かった。魔力を気取るエルフだが、少年はそれを知っていた。執念深く、文字通り死ぬまで追いかけてくる連中だ。少年は、エルフは感情を持たない化け物のように感じているのだ。情もなく、掟こそが人格を形成しているのだと。そして少年は、すぐに魔道具作りの技術で自らの魔力を封印した。

 エルフの追跡能力は異常なのだ。なにせ、少年の気配消しの結界を解いてから、あっという間に駆けつけたのだ。少女の声もあったかもしれないが、異常なものは異常なのだ。


 少年は拠点にしていた街を早々に出ていった。適当に日金を稼いでその日暮らし。

 そしてエルフに怯えながら過ごして数年の月日が経った。



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