第77話 誕生、サファイアブリード

犬洗い、もとい狼洗いを終えた進太郎は疲れていた。

「・・・・・・能力の封印、きついけどこれが人間か。」

風呂から上がりあてがわれた部屋のベッドに寝転がっていた。


百婆の修行並にきつかったが、疲れに満足感を覚えていた。

そう、進太郎は憧れていた能力のない普通の人間を体験していた。


人間の血は引いているが、片親は魔王。

小中学校時代は、思い出すのも嫌なスーパーヴィラン養成学校の日々。


誘拐や殺人、テロに窃盗と様々な悪事の技術を仕込まれその成果を

同級生や教官に向けては牢に放り込まれる日々。

悪にあっても悪に屈する事はなかった。


あの中で恋人や友達は、できるはずもなくなりたくもない奴らだった。

当時のクラスメート達は、学校が誘拐してきたどこかの世界の住人を

俺の目の前で貪るは嬲るは蹂躙しまくった。


小中学校時代にいた周囲の奴ら、世界ごと滅ぼしてやると誓った。

地獄が見えたあの日のことは忘れない。


心に憎しみの火が灯ると同時に、進太郎の全身を痛みが走る!!

「・・・・・殿下、しっかりなさって下さいまし!!」

バタンとドアを開けて入ってきた海賊服姿のサファイアが、服から

何かの瓶を取り出し液体を口に入れる。


そして、進太郎の上にのしかかりキスと共に液体を流し込む。


口の中で苦い液体の味が広がる、口が開けないので液体を飲むしかない。


サファイアの目を見るとハートマークになってる、鼻で呼吸しようとすると

彼女の甘い臭いが鼻に入る!!


どういうこと!? 発情期!?


ひと夏の経験か?俺がパパになるのか!?


飲み込んだ液体が体の痛みを消していく、なんだこれは?


サファイアが俺の様子を確認したのか顔を離す、だがのしかかったままだ。

「殿下の魔力を感じて馳せ参じましたわ、緊急事態でご容赦くださいませ♪」

笑顔でしれっと語る、絶対それだけじゃないはずだが。


「わかった、認めるからどいてくれないか?」

俺はサファイアに頼んでみる。


「・・・・・・私、殿下をお守りする為にはどけませんわ♪」

・・・・・・拒否られた。


「なら横で添い寝にしてくれ、のしかかりはきつい。」

今度はするっと横に回りガシっと、両腕で俺の脇の下を抱きしめ

自分の足を俺の脚に絡めてきたので俺が抱き枕状態だ。


「夢の中でも、お供してお守りいたしますわ♪」

サファイアの声が甘い、臭いも甘い、胸が当たり気持ち良い。


「・・・・・・体がきしむから抱きしめはなしで、一体化的な何かで。」

気持ち良いが、人間状態だと寝技掛けられてるのと変わらないので寝れない。


「かしこまりましたわ、では私が殿下の体に一体化させていただきます。」

サファイアが、瞬時に青い人狼を模した小さい棺型のガジェットに変身する。


「待て、いつの間にオトモモンスターになったんだよ!!」

驚いて起き上がる俺のへその下に、モンスターコフィンになったサファイアが

「殿下の指揮下に入った時ですわ~♪」

と叫んで俺の体に入り込む。


その後、俺の体から青いゼリー状の液体が噴き出し全身を包む。

液体がCGモデルのように変化して行き、ヒーローのような外骨格になる。


『殿下が能力を封印されていても、私から殿下にお力を差し上げられます。』

サファイアが、俺の目に映り脳に語りかける。


立ち上がって鏡を見ると、狼と人間を混ぜた青い仮面のヒーローがそこにいた。

「・・・・・・何で、こっちの方が普通に格好良いヒーロースーツなんだ!!」

もう凄い、これこそ日曜朝の主役なヒーローって感じの格好良さ。


サファイアの説明だと、俺の封印は俺が自分の意思で力を使う事はできないが

サファイアが憑依する事で俺の魔力を燃料にして力の制御をして俺が

サファイアの力と技を使えると言う仕組みらしい。


「鍋島さんが妖怪カードで変身したのと似たような理屈か。」

俺のつぶやきに脳内でサファイアが返事をする。

『こま女伯ですか、確かに近いですわね。』


新しい芸風と言うかスタイルに目覚めた進太郎であった。









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