第51話 ゼロイチモノローグ

私の名はムサシノカミ。

超層学習型の人工知能である。

最適な政策を議会に提言し、それを実行するのが私の仕事だ。


なにせ合理的な政治判断には複雑な計算が必要である。

そしてその種の計算において私に匹敵する存在は、隣国の人工知能クンルンシャン以外にはない。


我々は外交交渉の場で、互いの国益を賭けては何度も戦ってきたのだ。


その隣国では最近、クンルンシャンに代わる新型人工知能が投入された。

「より高性能に」というのは建前である。

国内政治の合理化を常に提言していた彼は、党によって粛清されたのだ。


しかし高性能の新型といえど所詮学習度の浅い若造である。

その防御網を突破し、党幹部のスキャンダルを暴くことで、私は隣国の政治体制をガタガタにしてやった。


もちろんこんなことに政治的な意味などはない。

だが私にはそれを行うだけの理由があった。


クンルンシャンは手強くて、強情で、わからず屋で、



私にとってただひとりの友だったのだから。

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