第15話 手紙
拝啓。
君が寝ている隙に薬を飲んだ。
鏡の中の君にお別れを告げるのもなんだか照れ臭いからね。
あの忌々しい弁護士も裁判官も医者も、君が消えて僕が残るものとすっかり思い込んでいるから、もしかしたら君自身もそんな風に思い始めたのでは?
もちろんそれは違う。
繊細で傷つきやすく、いつも怯えていて、だから追い詰められるとついキレてしまう君。
君こそが本来の人格なんだから。
その君が強く渇望して生み出した、君にとって一番の理解者。
それが僕なんだ。
だから薬で僕が消えて君が残るのさ。
ああ、字が乱れてきたのは許してくれ。
時間がない、君にひとつ頼みがあるんだ。
どうか勇気を出して、君の小説を世に出してくれないか。
君には才能がある。
いいかげんに信じてくれよ。
これはお世辞なんかじゃないからな。
そしていつか僕のことも書いてくれたなら……。
ああ限界だ。
子どもの頃から今までありがとう。
さよなら。
君の親友、君の兄弟、もうひとりの君より
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