パーティー
「チナミ班長、お待たせしました」
「いや、私も今部屋から出たところさ。……ローブ、持ってきたのかね?」
「はい、魔法師の証ですし。……いらなかったですか?」
「そうだな。説明が遅れてすまんが今日はローブのかわりに柊のブローチだけで構わんのだ」
「あ、そうなんですか。……どうしましょう」
「私の部屋に置いていこう。帰りに渡すよ」
「お願いします」
金の柊のピンブローチを外し、チナミにローブを渡すと。ぱたんと音をさせて重厚な扉へとチナミ入っていった。誰もいない廊下でぼんやりと立ってチナミを待つスクナ。ちろちろとガラス灯の中で燃える火を見ていると、ややもせず扉が開いた。
中から現れたチナミは、いつものショートケーキカラーの甘ロリに折れそうなほど細く白い首に渋く太めのチェーンにかけられた金のロザリオ、胸元には柊の葉が2枚交差した金のピンブローチ。そこから垂れる鎖はしゃらりと鳴いて4本。
スクナもあわてて、胸元にブローチをつけてチナミに近寄った。
「さて、君」
「はい、班長」
「行くかな」
「はい!」
そう言って勝手知ったるとばかりに先頭を歩くチナミに、ちょこちょことスクナはついていったのだった。
「君、そこを曲がったらすぐだぞ」
「チナミ班長、詳しいんですね」
さすがです! と言わんばかりに瞳を輝かせるスクナに、チナミは苦笑いした。暗くなっていた窓は赤いカーテンで閉じられ、ガラス灯には火が灯っていた。
「何十回と来ているからね。自然と覚えるさ」
「そんなに来てらっしゃるんですか?」
「仕事の都合上な」
さて、ここだ。天使や薔薇の花などが彫り込まれた重厚な木造の扉の前で、チナミは立ち止まった。ここがパーティー会場らしい。
むこうからは何やら人の声が聞こえてくる。パーティーはもう始まっているようだった。
「じゃあ、行こうか」
「はい!」
元気よく声を上げて、スクナはチナミへと笑いかけた。それに満足そうに頷くと、チナミはこんこんと小さく扉を叩く。
と。
ぎいいいいいと内側から開かれた。
「うわあ……」
最初に飛び込んできたのは優美な薔薇の絵が描かれた壁に天井、大広間の中心にある豪奢なシャンデリアだった。きらきらと中心から輝くそれから目を下ろしてみれば、色とりどりのドレスを身にまとった貴婦人方、燕尾服でシックにきめている男性陣。
その向こうには白いテーブルクロスの敷かれた長テーブルがあり、その上にはたくさんの料理が並べられていた。
部屋の中心、シャンデリアの下でどこからともなく流れている音楽に合わせて、くるくると踊る様子はまるで大輪の花が咲いているようだった。
「ふふ、君。驚いただろう?」
「あ……はい、びっくりです」
「私は大総統に挨拶してくる。君は料理でもつまんでいたまえ」
「え、あの……いいんですか?」
「チナミ班で招待を受けたが、挨拶は代表である私だけで十分だとも」
「そうですか」
「昼食も取っていないだろう? 食べておきたまえ」
「はい!」
「そうだ、くれぐれも君の謎を出してはいけないよ」
「ユティーを、ですか」
「混乱するからね」
そう言って可愛らしくぱちんとウインクすると、チナミは人ごみに紛れて行ってしまった。
それを手を振って見送ったスクナは、確かにお腹もすいたし。と白い皿とフォークやスプーンがおいてあるテーブルでそれらをとると、料理の物色を開始したのだった。
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