講義:謎とは

「では君、謎とは何かね?」


 ぴっと右手に持った銀の指示棒でさされ、体の動きに合わせてチナミのショートケーキな甘ロリファッションのドレスの裾がひらりと揺れる。

 ひらりと揺れるスカートに目を奪われながらも、スクナは手をあげて発言した。


「はい、謎とはこの世界に通じる‘知恵深きもの‘たち、もとい知恵あるものたちに創造主が1つの魂につき5つ与えたものです。その謎たちはどれも特殊な能力を有していて、その能力を総称して四字熟語と言います」

「ふむ、アデルの『疾風迅雷』や君の」

「ユティーは『有言実行』です!」

「その通りだ。そして、ひとえに私たち魔法師が『謎』と言った場合、それは他者から借りうけている状態のことを示す。謎は媒介を魂の依代としてこの世界に残していく。君のミサンガなり、私のこの洋服しかりだな。ちなみに『初解の謎』というのは、初めて解いた謎のことをいう。よく勉強しているようだな」

「ありがとうございます!」


 春風にふわふわと揺れる蜜色の茶髪、それに彩られた幼い顔は満面の笑みを浮かべ、同色の瞳を喜びと褒められた照れ臭さにきらきら輝かせて、スクナは席に着いたまま礼をとった。

 チナミの前で勢いよく下げられた頭はこん、と軽い音が甘い木の香りのする机からしたことから勢いをつけすぎてぶつけたらしい。

 ふたたびゆっくりとあげられた顔は羞恥に真っ赤になり、瞳は潤んでいた。

  見やすく開かれていた教科書はぱたんと閉じられ、書きやすいようにと置かれたノートはずれ、ペンは机の上でころりと転がった。


「あー……大丈夫かね?」

「平気です。続けてください……」


 肩を丸めふるふると震えながら、消えりそうな声で返された返事に、若干生ぬるい目をしながらチナミは続けた。

指示棒を右手に持ち、それで左の手のひらを軽くたたきながらいまだ頬の赤いスクナ問う。

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