謎を問う
「我がアシュタルト精鋭軍に告ぐ」
まるでマイクを通したかのように、きぃぃぃんと副音を響かせながら通る声。特に大きな声ではないのに、その一言に自然とユティーに視線が集まった。
スクナ、クライヴ、チナミ、警備隊、小鳥の鳴き声、木々のざわめき、風すらもが一瞬にして動きを止める。動くなと言われたわけじゃない。
ただそんな絶対的な、絶望的なまでに圧倒的な力に支配された感覚。食われると錯覚させるそれに、知らず皆は息をつめた。
すべてのものが時間を奪われる、支配されるその中で
「我が敵を拘束せよ」
ただそんななかで唯一、スクナの前にいる男だけは。普段と変わらぬ様子で、宣する。
ゆらり、ゆらり。地面が、空間が数度揺らめいたかと思うとスクナが瞬きをしている間に。そこには白銀に輝く全身甲冑に身を包み、腰には剣を佩いた騎士たちがいた。その数、約100名。甲冑の重みどころか人間の体重、存在感を感じさせない一点の曇りもない白銀の騎士たち。
風すら止まった時の中で、彼らはユティーに対して素早く拝跪をとる。
うっとおしそうにそれを見て、ユティーは告げる。
「いけ」
その言葉だけで、轟音が大広場を覆う。爆音とも表現されされるような低い大歓声が。がちゃがちゃと甲冑のこすれる音が。やけに緩慢に聞こえるそれを聞きながら。
その音に
まるで流れる時間の速さがあの騎士たちと自分たちでは違うのではないかとスクナが思うほどに、それは圧倒的な速さ、手腕、力で遊子をねじ伏せた。
首、目、口、腹、両手足首、尾。傷つけられたら間違いなく致命傷であろう場所を、複数の剣で押さえつけることで、動きを封じている。
はっと気が付いたチナミたちが見たものは、急所部位に剣を当てられ身動き一つ許されなく、平伏させられている
その鋭い爪で自分を殺しかけた存在が、あっさりと支配されるのをどこかぼんやりと眺めながら、スクナはまるで遊子が手のひらの上で踊らされる猫になったようだと思った。
喉の奥から、引っ込んでしまった声を絞り出す。
「……やりすぎじゃない?」
「殺してないだろう」
「そういう問題じゃないと思うんだけど……」
「ふん。そんなことより、早く行ったらどうだ」
若干複雑そうな顔をしながらも、スクナは剣で囲まれている
「汝の持ちたる謎を問う」
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