第30話 高速道路の雨

高速道路を運転していると、急な雨となった。スコールのような通り雨のような激しい雨だった。


夜だったので、視界も悪い。それが雨でさらに悪くなった。


頼りになるのは、前の車のテールランプだった。前の車の灯りを頼りに道を走る。


その時に、いまそこで高速を走っている車たちが一体になったように感じた。僕の車のテールランプが後ろの車を先導し、僕は前の車に先導されている。


ほとんどの車が60キロほどにスピードを落とし、歩調をあわせて進む。


誰も抜け駆けせず、誰も送れず、一緒になって歩む。まるでジャングルを探検するチームのように。


そして、雨が晴れると「おつかれ」とバラバラと解散する。


何か人生の妙味を垣間見た瞬間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る