異種族たちの挽歌
- ★★★ Excellent!!!
ファンタジーと現代社会が交わった架空のスラム街で、法の執行者たちの頭上を魔法と銃弾の嵐が飛び交うノアールファンタジー。
一見、エルフやヴァンパイアが登場するテンプレのようでもあるが、本質的には現代における人種間の確執や文明の衝突を描いた風刺でもある。途上人物たちの背景も丁寧に描かれており、生い立ちにおける差別や個を越えた使命に悩む者、現実世界にも異世界にも帰ることの出来ない漂白者である主人公の苦悩、また時代の流れに乗れなければ種族を守ることができず、同時に種族の伝統を守らなければアイデンティティを維持できないファンタジーの住人たちの内なる相克といった、突飛なファンタジー設定の中にもリアリティのある必然性を持たせているので、従来の異世界ものが苦手な人でも読み込んでいけるのではないだろうか。
要望があるとしたら、オリジナルのすぎる似たような単語が多いので、公開可能なまでの用語集、もしくは注釈が欲しいところ。特に、銃火器が出てくる度にGoogleで画像と動画を検索している羽目になっているので、作者なりの解説は欲しい。