幻想都市百景

作者 枯堂

75

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Good!

中坊向けのラノベとは一線を画す大人向け、もしくは大人っぽいものが読みたい子向きの静謐な作品

敢えて乱暴に表現すれば『キノの旅』に『狼と香辛料』を足してハヤカワ文庫JA風味にした感じ?

いやマジでハヤカワ文庫JAとか創元SF文庫とかから出版されても違和感ないと思います

★★★ Excellent!!!

「ファンタジー」がファーストフード的なジャンルと化した昨今、ファンタジー世界に生きる市井の一市民を扱った作品は、主流ではないとは言え、それでも山とあります。
けれどこの作品からは、単に奇をてらった軽薄さではなく、非現実に真摯に向き合う作者さんの誠実な態度が伝わって来て、また文章の軽妙と緻密のバランスの良さも伴い、興奮よりも穏やかな満足感が漂う、遊園地で遊んだと言うよりは好みの美術展でゆっくり時を過ごしたような、そんな読後感でした。
今後、どういう路線になるかは分かりませんが、どういう展開であれ、続きを見続けたいと感じます。
続作、楽しみにしています。

★★ Very Good!!

ドガやフェルメールの描く、精緻な油絵を喚起させる絵画的な文章だと思った。静止画でありながら躍動感に満ちており、ダイナミックさだけではなく、繊細さも兼ね備えているような、そんな絵画がイメージできたからだ。

そして、その紀行文を読み進めるうち、頭の中に浮かんだ絵画はやがて音を立て、香りを生み、私の体を包み込んでいく。
語り部が口にした果実の味が、じわりと舌を刺激する。
手元には何もないのに、指先は未知の革を撫でているような錯覚を覚える。

トリップという感覚を、五感全てで味わってみてほしい。

★★★ Excellent!!!

ファンタジーを舞台にした小説は多々存在し、その世界観も様々だ。
この「幻想都市百景」もそうしてファンタジーと呼ばれる幻想世界を舞台にして描かれている。

しかしこの小説で描かれるのは、選ばれた英雄でもなければ世界の王でもなく、世界の片隅に生きる人々の姿である。

新たな手帳を手に入れた所から始まるこの「日記」は、作者自身の文の選び方というか筆の運び方もまた秀逸で、主人公の視点やペンを通してなお、この世界に生きる人々の様子がリアルに見えてくる。
ひとつの話に舞台となる村の様子や顛末が過多になりすぎないように詰め込まれており、焦点を絞って読むこともできる。
また、ストーリーが先に進むにつれて世界観の方もまた一つひとつ広がってゆくさまは心地いい。

少しずつ、日記を盗み読むように読み進めていきたい一冊。
今後の展開にも期待。

★★★ Excellent!!!

過不足なく、華美にならず端的な文章で語られるこの紀行文は、幻想世界の様子をありありと思い浮かべられるように描かれている。
一度読めばどのような土地、文化を持った場所を歩いているのか良くわかるだろう。
これから先々の土地を歩いていった商人が何を書き記すのかとても気になる一作。

★★★ Excellent!!!

とかく物書き、とくに設定厨と揶揄されるような世界設定を作るのが大好きな人間は、自分の考えた最高にカッコイイ設定を説明したくてしたくて堪らないもので、ついついワーッと説明のための説明をしてしまうものだけれど、だいたいにおいて読者が求めているのは設定ではなく物語のほうであるから、設定の説明が長く続く文章というのは作者の自己満足に終わってしまいがちであるのだが、本作はほぼ物語と呼べるような物語はなく、ただひたすらに架空の世界の設定の説明が続くだけであるにも関わらず、そこに確かな質感と存在感があってついつい読まされてしまう。奇妙な感覚である。