......Reloaded

<SoundHorizon><......Reloaded>私たちが作ってきた文化とはなんだったのか。正確に言うならばもちろんそこに私はほとんど参加していないにもかかわらず同じ罪と快楽を分かち合うことになる文明あるいは人間という惑星伝説の衝動。殺し殺され奪い奪われ苦しめ分かち合い愛し憎みあうこの連鎖の本能と無限に続くかに見える言葉あるいはメディアの人間を利用して進化しようとする意志。名前のない少女の誕生と檻の世界の合わせ鏡の強迫観念。そして思考実験。怪物の誕生は神の創造と同じくらい論理的で残酷でそれでいて美しい憐れさを感じさせるものだ。私が望んでいるもの、それは新しい種族を産みだすことではなく、いかなる人間が、いかなるテクストが、いかなる音楽が、いかなる神が、より価値があり育成されるべきかという問題、あるいは少なくともひとつの破壊が実行されなくてはならないということである。「人間が幸福に生きられればいいのだ」という主張、あるいはある種の調和と安らぎを達成すべきだという主張、「我々はすでにひとつの頂点、ひとつの進歩に立ち会っているのだ」という主張、人類の発展の黒歴史を解釈し捏造し生産し凡庸にするのが目的のすべてだという主張をことごとく見下していくこと。我々は確かに宗教的狂信の使命を担っているのかもしれない。それはいまだ目的すらわかっていない爆発であるかもしれないし、全く何の意味もない虐殺であるかもしれないし、ただなんとなくこの世に生れ出たことを表明したいだけの騒音であるかもしれない。誰もそれを止めようとするものはいないし、いたとしてもその者は無数の幻想と溢れ出る狂気を前に無力であり哀れであり操り人形であるだろう。ひとつの予言がある。希望に満ちた運命の予兆、幾多ものメッセージ、未来を解読するための必死の試み、そうしたものがことごとく外れていき、失敗し、無駄になり、絶望的になるにもかかわらず新しいものは生まれてくる。それは過去に起こったことがもう一度繰り返されるという意味で茶番なのだろうか。冒険と侵略、支配と反抗、英雄と奴隷の悲劇。知恵あるものは勇気ある者でもありそれは必ずしや運命の女神に愛されるに違いないけれども運命の女神はどうしようもなく気まぐれで残酷だ。悲劇と喜劇は紙一重、笑いあるところにこそ悲しみはやってくるのであり、あらゆる不幸もまた繰り返され回帰しなくてはならないのだろうか。ならばせめて幸福な思い出や物語だけでも保管しておくべきなのだろうか。愛は永遠であるという陳腐な迷信を、信じるものは救われるのだという良心の詐欺を、昔願ったささやかな祈りが叶うのだという御伽噺を、みんなが幸福になる継ぎ接ぎだらけのハッピーエンドを求める為に無限の檻の中の迷宮で戯れること。「時間がないぞ、砂時計、猫の世界は、袋小路」。終わらない悪夢から目覚める為に走り続けてきた舞台の王国は、ただ自らの領土を維持するために国民の欲望を搾取する演出装置になってしまった。少女の瞳の中に、ただ世界だけを見ていたあの頃の男は、いまでは中途半端な笛吹き男に、歌って踊れる裸の王子に、そして凍え死んでいる子供に戻ってしまったのではないか?母、またしても母か。残されたものは生まれたことを否定し女性の不幸を受け入れることだ。対象から欲動へ、つまり男性の救いを放棄し、女性が壊れ続け、狂い続け、元に戻らなくなった状態そのものを肯定し、愛すること。それは舞台になったときに忘れ去られた夢、嘆きの追悼、絶望の解釈をことごとく統合したものになるはずだ。肖像画がしゃべりだすための沈黙の音楽。「でも私、白痴の女性は認めないからね」

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