第45話 半年後

 それから半年が過ぎた。学校やらなんやらでいそがしくなっちゃって、レンチをふるいにロイヤルミルクティのお城には行けなかった。


 一方でユイニャンはというと、体のふらつきもとれて、レモンティ国で歓迎され、エリオット様との仲もすっかり公認になった。すれ違いが続いて、今ではあまり、あたしと会うことも少なくなった。


 そんな時、ロイヤルミルクティのお城から、お呼びがかかった。クローンの薬草が完成したので、アイシアさんに使用するため、見守りに来てほしい、とのことだ。あたしはもちろん、ユイニャンや、エリオット様にも連絡がきていた。


 当日は、エリオット様が、馬車で迎えに来てくれた。当然、というか、もちろんユイニャンも一緒で、なんだか少しほっとした。だって、あれだけいちゃついていた二人が、別れてたらショックだし、気まずいじゃん。


 ……それよりか、剣の稽古に行かなかったあたしとジョシュアさんの方が気まずい。まず、怒ってるだろうな、ジョシュアさん。


「本当に久しぶりだねぇ、ユイニャン。それに、エリオット様」

「ミカリン、会いたかったですぅ」


 馬車の中で、あたしの横に座ったユイニャンに抱きつかれた。


「その後、変わりはない?」


 エリオット様は、なんだか前より大人っぽくなったみたい。


「変わらないです。でも、なんだかとてもいそがしかったです」

「ミカリン、あの車はどうしました?」


 いつもより感情がたかぶっているのか、いつになく積極的なユイニャンに車のことを聞かれて、首をひねる。


「そういえば、あの小屋も車も、あの時のままだ。一回だけ見に行ったけど、それっきり」

「ねえ、ミカリン。またドライブに行きましょう」

「いいけど……」


 あたしは横目で前に座るエリオット様を見た。


「いいんじゃない?たまには、女の子同士で仲よくあそんだら?」


 おっと、エリオット様、嫉妬してこない。


「じゃあ、そのうち……」

「そのうちって、いつですか?わたし、ケーキを焼いて持って行きます」

「え?なんで、そんな?」


 やけに積極的なユイニャンに、エリオット様は上品なしぐさで笑う。


「どうやらユイニャンには考えがあるようだね」

「そうです。だって、ミカリン、いくら敷居が高いからって、ジョシュア様に会いに行かないなんて、ひどいです」

「なんで知ってるの?」

「時々、エリオット様と一緒にアイシアさんのお見舞いに行きましたから」

「だったら、あたしも誘ってくれたらよかったのに」

「だって、お邪魔じゃないですか?」

「あたしが、ユイニャン達のお邪魔ってこと?」

「そうではなくて……」

「ユイニャンは、ジョシュアがミカリンのことを好きだと思っているんだ」

「はぁ!?」


 あまりのことに、あたしは開いた口がふさがらない。たしかに、ジョシュアさんは、カナミア様のことをあきらめたようなことを言ってたし、他に好きな人ができたとも言ってたけど。うん?


「はい。アイシアさんも同意見でした」

「……ルーさんは?」

「笑ってました。占い師さんが答えてくれないってことは、そういうことですよねぇ!? それなのに、ミカリンは、一度もジョシュアさんに会いに行かないなんて」

「け、剣の稽古に誘われたのに、行かなかったことは後悔してる」

「まあぁっ!? 誘われていたのに、行かなかったなんてっ」

「だから、剣の稽古だって。そんなんじゃないって」


 ……ちがうよね、多分。なのに、ユイニャンは大きな目を輝かせて、あたしににじりよってくる。


「それは、ミカリンが鈍いんです」

「そんなこと言われても……」


 あたしは答えに困る。


「たしかに、あの堅物のジョシュアが剣の稽古とはいえ、女の子を誘うなんて、めずらしいな」


 エリオット様まで悪ノリしてくる。


「もう、その話はやめませんか?」

「ぼくも、ジョシュアにとってのきみは、特別な存在だと思う」

「そうですよね。やっぱり、エリオット様もそう思いますよね!?」

「でも、半年も会ってないし」


 あたしが言うと、二人ににらまれる。


「それは、ミカリンが悪いです」

「いいや、花束のひとつも持って行かなかったジョシュアが悪い」

「そんなあ~」


 あたしは馬車の中で、悲鳴をあげた。逃げるところはないっ!


 ◆◆◆


 馬車の中で散々からかわれてるうちに、ロイヤルミルクティ国のお城についた。


 今日、この日をアイシアさん以上に待ち望んでいたカナミア様は、あたし達の姿を見ると、おそいっ、と唇をとがらせた。


 そして、ジョシュアさんは……。


 ジョシュアさんは、あたしと目をあわせることなく、きびすを返してしまった……。


 つづく




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