第39話 まさかの展開

 なんと、ここにきて、まさかの愛の告白っ。ジェインさんは、アイシアさんをまっすぐに見つめている。それに対して、アイシアさんは、だんだん顔が赤くなってきた。


「あらやだ、この子ったらウブなふりしちゃって」

「そ、そんなんじゃないわよっ。だけど、いきなりだから……」

「いきなりと言うなら、そっちですよ。頭突きをされてから、ずっと意識してしまって、あなたのことしか考えられなくなってしまいました」

「なにそれ。あれって、ただ魔力を奪っただけで、なんの意味もないんだけど」


 アイシアさんは、頬をふくらませた。しかし、ここで引き下がるジェインさんじゃない。一歩前に進み出て、胸の内を語る。


「それでも。いかさまジェインのハートを射止めるには充分です。しかも、あなたの魔力の重さ。これにもかなり、しびれました」

「ちょっと、ただの変態じゃない。あたしは、あなたの国の王子様を人質にとった女よ? それなのに告白だなんて。わかった、あたしのこと、からかっているんでしょう?」

「とんでもございません。このジェイン、あなたを裏切ることは決してしないつもりです」

「こんな時に、よく言えるわね」

「それに、あんたは浮気性で、将来アイシアを困らせるんだから」

「ママ? それ、どういうこと?」


 アイシアさんは、ぽかんとルーさんを見つめた。


「どうもこうもないわよ。二人は結婚して、五人の子宝にめぐまれるんだ」

「ママ、ウソだって言って。あたし、いかさまとなんか結婚したくないよ」

「うるさいっ。あんたに拒否権はないのっ。だって、王子様を人質にとったんだから」

「そのせいで?」

「それがきっかけよ。あきらめなさい」

「お母様、娘さんをこのジェインめにください!」

「はい、どうぞ」


 あまりにもあっけなく、ルーさんが答えたもんだから、みんなでぽかんとするはめになってしまった。だって、はい、どうぞ、なんて答えある!?


「ママ?」

「なによ。あんたはねぇ、王子様を人質にとったことが元になって、だれからも相手にされなくなるの。このチャンスを逃したくなければ、こっちから頭下げてもらっていただこうじゃない」


 それはそれで自業自得というか、なんというか……。


「うちの娘を、どうかよろしくお願いします」


 ルーさんは、あらためて深々と頭を下げた。ジェインさんはガッツポーズをしているし、カナミア様は拍手している。


「まったく、忙しい人ね」


 それがカナミア様からの祝福の言葉だった。


「待って、あたしまだいいって言ってないんだけど」

「じゃあ、チャンスを逃すのか!? あんたは本気でバカなんだから、これを逃したら次はないと思え」

「それでもいいよ!」

「よくないっ! あたしに孫の顔見せないつもりか!?」

「だって、五人も産んだあげく、浮気されちゃうんでしょう!?」

「しょうがないじゃない。あんたみたいなの嫁にもらってくれるのは、いかさましかいないんだから」


 おもわずアイシアさんが言葉をつまらせる。そんなアイシアさんの頭を、ルーさんがやさしく抱きよせた。


「大丈夫よ。浮気って言ったって、相手の女が勝手に誘惑してくるだけだから」

「それだって、気分が悪いよ」

「あんたなら、やれる。王子様を人質にできたぐらい大胆なんだから。それとも、魔女のままで、あたしと占いで食っていくか?」

「そのどっちかしか選べないんだったら、少し考えさせて」

「構いませんよ。このジェイン、あなたのためならいくらでも待ちます」

「まったく。口がうまくて、ムダに顔がいいからって、調子にのるんじゃないわよっ!?」

「アイシアさんも一度くらいは、調子にのってみたらどうですか?」


 ジェインさんの口車に、アイシアさんが黙りこむ。


「なんだかんだで、相性はいいみたいじゃない?」


 カナミア様は、かなりの祝福モードだ。あげくに、あたしにも同意を求めてくる。


「ねぇ? そう思わない?」

「ええと、そうかもしれません」

「それに、ジェインと結婚することが、あんたの今回の最後の罰。始まりの罰でもあるのかな?」


 カナミア様の言葉に、アイシアさんが目を丸くする。


「罰? そっか。罰か。だったら、受けなきゃいけないよね」


 アイシアさんは、うつろな目でジェインさんを見つめた。なんか、艶っぽい。


「わかりました。結婚を前提に、おつきあいさせていただきます」

「どうか、ムリをせず、友達からスタートしましょう」


 アイシアさんの答えを聞いたジェインさんは、とびきりキレイな笑顔でそう言った。……うん、たしかにムダに顔がいいってのは同意できるな。黙っていたら、いくらでも女の子がよってくる感じするもん。


「え~ん」


 そして、ついにアイシアさんは泣き出してしまった。それが告白されたことの涙なのか、選択肢がないせいなのか、あたしにはわからなかったけれど、なんだかちょっと、もらい泣きしちゃった。


 つづく














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