第17話 手芸店

 とりあえず、魔女がいそうな手芸店をしらみつぶしに回ることになったあたし達だけど、お店は閉店の時間帯になっちゃったので、大人しく夕飯を食べることになった。


「あ~あ、せっかくユイニャンの手作りお菓子を食べるチャンスだったのに」


 おいしそうな骨付き肉を目の前で力なくぶらつかせて、エリオット様がため息をついた。


「そうぼやくな。おまえはユイニャンといちゃつければ、それでいいんだろう?」


 さっきとおなじ台詞をジョシュアさんが言った。見かけによらず、ジョシュアさんは豪快に肉にかぶりついている。


「それで? ローズヒップティ国内に手芸店はどのくらいあるんだ?」


 ジョシュアさんはジェインさんに聞いた。ジェインさんは、魔法使いにしか操れない端末機を取り出して、操作する。


「え~と、手芸店で調べたところ、二十三店舗程ありました。でも、本当にそんなところに魔女がいるんでしょうかねぇ?」

「なんだ? 手芸店に魔女がいると言ったのは、おまえだったよな?」

「そうなんですけど。ただ、わざわざ魔女狩りにあいそうな場所に自分からいるかな、って思ったのです」

「ジェインのくせに、さえたことを言うじゃないか。たしかに、それもある。だが、行ってみなければわからないことだってあるだろう?」

「そうですよねぇ……」


 あたしたちは、本当になんのプランもなしに最強の魔女を探しているんだ。仮に、見つかったとしても、ロイヤルミルクティ国までついてきてくれるのか、戦いになるのかもわからない。その間にも、魔女であるユイニャンは魔女狩りの標的にされている。……どっちにしても、もっとレンチさばきの練習が必要になりそう。


「心配するな。食後にまた稽古をつけてやる」


 すっかり見すかされていたので、今度は素直に返事をしておいた。


 ◆◆◆


 食後に素振り五十回という鬼畜さを見せつけたジェインさんと宿の部屋に戻った時には八時半をすぎていた。


 部屋に戻るなり、ユイニャンとエリオット様がいちゃいちゃしていた。これには困った。


「おかえりなさい、ミカリン。お稽古ご苦労様です」

「ただいま。エリオット様、あたしお邪魔じゃないですか?」

「そんなことないよ。お疲れ、ミカリン。ジョシュアの稽古はきつかったろう?」


 疲れた後の、エリオット様の笑顔はしみる。この色男め。


「はい。さっそく手の平に豆ができました」

「それは大変だね。それじゃ、ぼくはこれで失礼するよ。二人共お休み」

「「お休みなさい、エリオット様」」


 エリオット様はたのしそうに手の平をふって、部屋から出て行った。


「疲れたぁ。お風呂入って寝よう」

「うふっ。そうですね」


 なぜだか、しあわせそうなユイニャンが鼻につく。ムリもない。あたしが素振りしていた間、エリオット様といちゃついてたのだ。


「それで? エリオット様となんの話をしていたの?」

「えっと、得意料理のこととか、どんなお菓子が作れるか、とか、編み物でなにを作るのかとか。そんなお話でした」


 エリオット様は、真剣にユイニャンのことを知ろうとしてくれてる。よかった。あと、本気でユイニャンの手料理が食べたいんだってことがわかったよ。


 こうして、あたしたちの夜はふけていった。


 ◆◆◆


 翌朝。あたしたちは早々に朝食を平らげ、宿屋を後にした。最強の魔女探しのため、とはいえ、普段なら興味を持たない手芸店をめぐるのは、とてもたのしみだった。


「手芸店って、可愛い物や、キレイな物がたくさんあるの?」


 このメンバーの中で唯一、手芸店に行ったことのあるユイニャンに聞いてみた。


「完成品が売っていることは、あまりないです。見本として置かれているものがあったり、たくさんの色味があってキレイです」

「おれは、興味ないな」


 ジョシュアさんが退屈そうにぼやいた。きっと、稽古をしている方が好きなのだろう。


「さてと。とりあえず一軒目ですが……」


 ジェインさんのナビゲーションに従って、歩みを進めていたあたし達はぽかんとなった。


 そこにあるはずの手芸店が、閉店となっていたのである。


「お休み?」

「いいえ、あなた達のせいよ」


 突如としてあらわれたのは、この国のお姫様、カナミア・ローズヒップティ様だ。うわ、今日も派手。


「カナミア?ぼく達のせいとはどういうことだ?」


 エリオット様に聞かれて、カナミア様は視線をそらす。


「あなた達が最強の魔女を探している、という噂が広まって、魔女が経営しているお店は閉店してしまったの」

「魔女は? どこに行ったんだ?」


 ぶっきらぼうにジョシュアさんが聞くと、カナミア様がうふふっと笑った。


「修道院よ。そこなら少しは、魔女狩りの脅威から守ってもらえるもの」

「なら、修道院に行けば、最強の魔女がいる可能性もあるんだな?」

「修道院は男子禁制よ」


 カナミア様の言葉に、あたしは目からうろこが落ちるかと思った。ユイニャンを安全に守ってくれるのは修道院しかなかったのだ。


「まぁ、それでも最近は、魔女狩り目的の盗賊が強行突破してきて、大変なんですって」


 ……全然安全じゃなかった。


 つづく





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