第16話 対策

 あたしの体力を見越したジョシュアさんが、素振を早めにきりあげてくれた。それから、また部屋に戻って、最強の魔女探しについて、みんなで話しあうことになった。


 ジェインさんが、お菓子を買ってきてくれたおかげで、なごやかに会話が進む。


「では、センサーの感度をあげてみたらどうだ?」


 ジョシュア様は自分の腕につけたセンサーをいじりながら言った。


「それだと、センサーがユイニャンに反応してしまう」


 ムッとして、エリオット様が言い返した。


「それもそうだな?」


 めずらしく、言いあいにならなくて、内心ホッとしたよ。


「ジェイン、おまえはどうやって魔女を見抜くんだ?」


 腕を組んだまま、ジョシュアさんが聞いた。ジェインさんは、うなってから答える。


「勘? ですかね」

「……センサーは必要ないな。この旅は、ジェインひとりで解決できそうじゃないか」


 ジョシュアさんにおちょくられて、ジェインさんは舌を出した。


「その勘も、可愛い子限定なんですよね」

「そうではない魔女も、まじめに探せよ」

「まじめに探すと、可愛い子しか見えなくなっちゃうんです」

「最低な男だな」


 吐き捨てるようにジョシュアさんは言った。たしかに、魔女でもなく、可愛くもないあたしからしたら、ジェインさんの差別発言は見逃せない。でも、お菓子にめんじてゆるす。


「それで? 結局どうするつもりなんだ?」


 ジェインさんが買ってきたお菓子をつまんでいたエリオット様が、問いただした。


「とりあえずこのセンサーと、ジェインの勘に頼るしかない」

「それより、コンテストを開催するってのは、どうだろう?」


 突如としてエリオット様が突破口を開いた。が、内容がよくわからない。


「カナミアに協力させて、だれが一番器用かを競ってもらうんだ」

「……一見、良いように思えるが、自分が魔女だとバレたくない者は参加しないんじゃないか?」


 それじゃ、なんの役にもたたない。探したいのは、普通の魔女じゃなくて、最強の魔女だもんね。


 せっかくエリオット様が意見を出してくれたのに、残念がっていると、いいや、とジェインさんの目が輝いた。


「コンテストなんだから、懸賞金を出せばいいじゃないですか。魔女だって、お金はほしいでしょう? たとえ、目立たないように暮らしていても、お金は必要でしょう?」

「だが、そう、うまくひっかかってくれるか、だよな?」


 ジェインさんの提案にも意を唱えるジョシュアさん。相変わらず、苦虫を噛み潰したような顔をしてる。あたしは、ついがまんができなくなって、手をあげた。


「金額によると思います」


 だれだって、お金がほしい。……はずだ。金額が大きくなるほど、夢中になる。……はず。


「おまえ、包み隠さないな。それで?具体的に魔女が誘い出される金額って、どのくらいだ?」


 ジョシュアさんに聞かれてあたしは頭をひねる。


「多すぎても警戒されるでしょう。少なくては誘い出されない。間をとって、100万はどうですか?」


 かなり思いきった金額だ。


「なるほど。それくらいは必要か? では、コンテスト開催中は、会場の外に出られないよう、警備を強化してもらおう。参加者の中に最強の魔女がいるかどうかを、ジェインに見てもらう」

「おまかせください」


 ジェインさんはほくほくしながら返事をした。この人、つかみどころがないなぁ。


「もうひとつ、大事なことだが、一体なんのコンテストをするんだ?」

「料理上手で洗濯や掃除が得意で……」


 エリオット様の答えに一抹の不安を覚えた。


「エリオット様、それって、理想のお嫁さんコンテストってことですか?」

「それだと、優勝した者に婿をあてがわなくてはならなくなるぞ? おれはイヤだからな」


 と、すかさずジョシュアさんが釘をさす。


「それに、なんか差別的な感じがします」


 飄々とジェインさんが言った。たしかに、どこか差別的なにおいがする。


「やっぱりやめるか、コンテスト」


 やけになってジョシュアさんが叫んだ。エリオット様は、急にユイニャンに向き合った。


「ところで、ユイニャンの特技はなにかな?」


 魔女のことは魔女に聞け、とでもいうような雰囲気に、ユイニャンは息を飲んだ。


「わたしの特技、ですか? ええとぉ……、なんでしょう?」

「お菓子作りは?」


 すかさずあたしがフォローを入れた。


「あとは、編み物とか」

「編み物か! それならおもしろいかもしれないな」

「見ている方は地味ですがね」


 しれっとジェインさんが毒づいた。せっかく盛り上がりかけたのに水をさされて、エリオット様がムッとする。


「だったらもう、手芸店をくまなく回ってみたらどうですか? うまくすると、魔女がいるかもしれない」


 あたしは思ったことを口にした。他に手はない。問題は、魔力をごまかしている魔女がいるってことだけど、これはジェインさんの勘に頼るしかない。


「しかたない。それでいこう」


 ジョシュアさんの一声で対策が決まった。


 コンテストの話が立ち消えて、エリオット様はさみしそうだった。


 つづく










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