第11話 お城の中で

「着いたぞ。長旅だったな」


 言われるほど長旅ではなかったけれど、ジョシュア様には長旅だったのだろう。ユイニャンとあたしは、エリオット様に手をひかれて馬車を降りた。目の前には絶景のバラ園!そして白亜のお城!これぞお城って感じにへらへらしていたら、ジョシュア様に冷たい目でにらまれた。いいもん。


 そして、さっそくお城の中に入る。うわっ、きれいなメイドさんにかっこいい執事さん達。はぁ、ここは夢の中ですか!?


 思いをめぐらせながら、ジョシュア様の後をついて行く。長い廊下を歩いていると、こっちの方が長旅に思えてくるよ。


「ユイニャン、もう少しだから。おそらく、大広間に行くつもりだろう」


 エリオット様は、ユイニャンを気づかって声をかけた。と、いうことは、大広間に王様がいるってこと?……待たせてないといいけど。


 あたし達が大広間にたどり着く 手前のことだった。後ろから可愛らしい足音が、駆け足で近づいてきた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。おにいちゃまぁ~!」

「シャノン? おまえ、よくおれが帰ったのがわかるな?」


 とても小さな、可愛らしい女の子。じゃあ、この小さなお姫様が、魔女のシャノン様ね。シャノン様は、勢いをつけてジャンプすると、ジョシュア様に抱きついた。


「わかるもん。シャノン、おにいちゃまがだ~いすきなんだからぁ!えへへっ」


 うわぁ、お人形さんなんかより、ずっと可愛らしい。しかも、それでもなお、無愛想なジョシュア様を大好きだと公言なさっているところが泣けるじゃないよ。


「シャノン、わかったから放してくれ。おれ達はこれから父上に用があるのだ」

「なら、シャノンもいくぅ! あ!エリオットだぁ!」


 シャノン様は、エリオット様を見つけると、翔び移るようにエリオット様に抱きついた。どうやら、好きな人には抱きつくらしい。うむ、可愛らしいぞ。しかも、ジョシュア様より頭ひとつ分背の高いエリオット様は、しっかりとシャノン様を抱き止めている。うん、絵になる。


「久しぶりだな、シャノン。元気にしていたか?」

「うん!さいきん、エリオットがこないから、さみしかった」

「シャノン様ぁ~‼」


 また後ろから声がした。あらこの人も美人さん。


「リリー!おにいちゃまがかえってきたの!」

「シャノン様! ……失礼いたしました。わたくし、シャノン様の侍女長のリリーと申します」


 リリーさんは、シャノン様に抱きつかれながら、しっかり頭を下げた。


「リリーもおにいちゃまたちとあそぼう!」

「だから、これから用があるとさっきから言っているだろう?」


 あまり強く拒絶されて、シャノン様はべそをかき始めた。


「うぇ~ん、おにいちゃまのいじわるう~」

「シャノン様、ジョシュア様はおいそがしいのです。どうか、聞きわけてください」


 リリーさんは、泣き出してしまったシャノン様を懸命にあやした。見かねたエリオット様がジョシュア様に声をかける。


「そう、頑固に突っぱねなくてもいいだろう? ぼくを同席する程度のことだ、シャノンがいたって構わないんじゃないのか?」


 さすがのジョシュア様も、泣き止まないシャノン様を前に、頭を抱えている。


「……しかたない、父上をこれ以上待たせるわけにはいかない。シャノン、大人しくしているんだぞ?」


 ついにジョシュア様が折れた。シャノン様は泣きべそをかきながら、えへへっと可愛らしく笑った。


「はい、おにいちゃま!シャノン、おとなしくしてますぅ」

「……よし、行くぞ」


 ジョシュア様は大きなため息をついて、あたしたちに呼びかけた。


 大広間に入ると、ジョセフ国王陛下がお待ちになっていた。


「一同、顔をあげよ。おや?シャノンもいるのか?」

「申しわけありません、父上」


 ジョシュア様が深く頭を下げた。あたしは、目の前の陛下の若さと美貌に目がくらんだ。少なくともあたし達の両親よりも、ずっとずっと若く見えたから。しかも、めちゃくちゃ美形。


「構わん。シャノン、大人しくするのだぞ」

「はい、お父上!」


 シャノン様は、すっかり泣き止んでいた。これなら話が先に進むだろう。


「エリオット、久しぶりだな。そなたが公務をおこたるほどに大切な、愛する女性を紹介してくれ」

「はい。ユイニャン・セイロンです」


 陛下は興味深そうにユイニャンを見おろした。


「なるほど。するとそなたが、魔力をコントロールできないのか?」

「はい」


 ユイニャンの声は震えていた。エリオット様は、ユイニャンをはげますようにぴったりと側についた。


「そうか、そんなに不安定ならば、不安だろう」


 陛下は不安そうなユイニャンにやさしい言葉をかけてくださった。


「見たところ、そなたが島を滅ぼす魔女には思えぬな。そこで、わたしからひとつ、みなに頼みがある」


 頼み?と、ジョシュア様が身を乗り出す。


「そなたらの大切なユイニャンの汚名をはらすために、そなたらの力で強力な力を持つ魔女を探し出してもらいたい。できれば、すぐにでも」


 あまりのことに、あたしは息を飲みこんだ。あの、あたしまだ自己紹介もしてないんですけど……。


「それは、このメンバーでなければならないのでしょうか?」


 ジョシュア様はあたしとユイニャンを見くだすように言った。それに対して、陛下はおおらかに笑う。


「必用なものはこちらで用意しておいた。そちらで不必要な人材だと判断したのならば、連れて行かなくともよい。ただ、この男は連れて行きたまえ」


 陛下はそう言うと、手を打ち鳴らした。奥から出てきたのは、夕べあたし達を魔女狩りから助けてくれたジェイン様だった。


 なに、なに!? やっぱり彼、王室の人間だったの!?


 つづく




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