第10話  ゾウリムシ分裂とメディアへの漏洩

 ギアソンが帰った後、彼は担当医である院長に連絡を入れず、目を閉じた。息を整え、神経を身体の隅々までコントロールしようと集中する。死の一歩手前まで行っていたダメージで、まだ体力がひどく落ちている。何回かコントロールを外し、額にうっすらと汗が吹き出した。

 やがて、彼の身体は淡い紫色に輝きだした。表皮細胞が有機セラミック化し始めたのだ。損傷部分に、集中する。

 左心臓の大部分が破壊されている。組織を組み立て、再構成させねばならない。損傷部分が大きいので大仕事だった。彼は神経を集中させていたので、人が入って来た事に気づかなかった。


 ミーナははっと足を止めた。ライルの身体が紫の光に包まれている。それはまるで呼吸しているかのように、微かに明減していた。

 そこにいるものは、胸が震えるほどに異質なものだった。硬質を帯びた輝くもの。

 

 ――あれは、何?


 でも、その輝きは、なんと温かいのだろう。限りない優しさ。慈しみに満ちた静謐。これがライルなの……。

 いつしか、ミーナは歩みを進め彼の側まで来ていた。我知らず手を伸ばし、その光に触れようとした。

 突然、輝きがふっと消える。

 ミーナはあっと手を引っ込めた。ライルの紫の眼が彼女を見詰めていた。


「あ…、わたし……、ごめんなさい。邪魔するつもりじゃなかったのよ」


 急いで謝る彼女に、紫の瞳が温かく微笑んだ。


「ありがとう。ミーナ。ずっと看病してくれて。……君は、私が気味悪くないのですか? 今、見たでしょう。私は、君達に化け物と言われても仕方ないのですよ」

「化け物だなんて……。あなたにとって、わたし達のほうが怪物かもしれない。あなたはきっと、とても進化した高貴な存在なんじゃないかしら。どうして地球に来たの?」

「高貴な生物などありはしません。全ての命は生きている故に尊いのです。私は君達が好きです。君達は精一杯生きています。その活動力は眩しいほどです」


 ライルの瞳が遥か彼方をみつめた。


「でも、私の話に戻りましょう。第一次有人宇宙探査船のことは知っていると思います」

「ええ、悲劇的な失敗に終わったのよ。今から四十二年も前の事件だわ」


 木星軌道付近で動力炉の暴走を起こし、制御を失った船は、前代未聞の加速を続けたまま、太陽系を飛び出し、深宇宙の彼方へと去ってしまったのである。

 そして、昨年、なぜか奇跡的に太陽系へ戻ってきたところを発見され、話題になった。今も太陽へ向かっているが、何とか回収するための検討が行われている最中だった。これに反対する声もあり、そのまま太陽へ帰らせて欲しいと、特に遺族達から要望がでており、賛否の論が盛んである。


「その船をバリヌール人が発見しました。それが、巨大恒星の引力圏に真っ直ぐ飛び込んで行ったので、牽引し、同調させて接舷しました」


 船内は酸鼻を極めていた。乗員は原形すら留めぬ肉の塊と化していた。その中で、加圧シートに倒れこんだおかげで比較的損傷の少ない遺体を標本として保存処理し、持ち帰った。


「それが、レオンハルト・フォンベルトだったのです」

「えっ! じゃ……あなた……」

「幸い、その船の空調システム装置は、圧力が掛かると同じくして駄目になったので、損傷の主な要因は、高重力と気圧の激変に留まっていました。肉体は潰れて破裂していたけれど、骨格は比較的無事で、ヘルメットに守られていた脳も、まだ読み取り可能でした。生物学者達は、脳に記憶されていた情報を出来る限り再構成し、細胞から遺伝子を抽出し保存しました」


「ほう。どうして見知らぬ生物に対して、そこまでの手間を取るのです?」


 いきなり院長の声がして、ミーナは飛び上がった。院長、R・モリス医学博士が、後ろ手に身を屈めて熱心に聞き入っていたのだ。


「あらゆる生物のデータを集めていたのです。宇宙は様々な形態の生命に溢れているのです。我々は、多くの知識を得ることが喜びでした。もともと紫外線の強いバリヌールの世界が、生物相に乏しいこともあって、宇宙中の生物のモデルを再構成して保存する作業は熱心に行われてきたのです」

「モデルの再構成といいますと?」


 モリス博士は涎を垂らさんばかりに、目を輝かせて訊いた。


「可能ならば、遺伝子を元に生物体として復元します。あるいは半有機状態で。無理がある時は電子パターン化してシミュレーションします。地球人のモデルは原型の損傷が甚だしく、完全なデータが得られなかったので、シミュレーションモデルとして、処理されました」

「素晴らしい! 夢のようですな。そのモデルや蒐集したデータが手に入るものなら、私の魂など幾らでも悪魔にくれてやるんだが」


 モリス博士は、夢見るような目付きで、揉み手した。


「彼のシミュレーションモデルを研究していくうちに、地球人という種族の若々しい活動力と可能性に惹かれたのです。バリヌールは、非常に古い種族でした。活動力が停滞してから長く経っていました。自分達の限界を悟っていたのです。それで、リザヌールの分裂素基を和合生成する際に、その地球人の遺伝子も加えたのです」

「それは、君の種族の生殖方法だね? 分裂素基? 君の体の外観は作り物だ。内臓と一致しない。実に良くできてはいるがね。乳首も、臍もペ……」


 彼は傍らの妙齢のご婦人を見遣って言い直した。


「その性器もしかり。ただの付け足した付属品にすぎない。君達はどんな生殖法なのかな。やはり、雌雄の両性かね?」

「いいえ、私達は単性です。性別はないのです。分裂型生殖です。地球の生物で言えば、ゾウリムシあたりが、かなり近いかもしれません」

「ゾウリムシ! なんて高度なゾウリムシだ!」


 モリスは揶揄でなく、純粋に感嘆して叫んだ。

 この時、両者の認識は一致していた。

 ゾウリムシとバリヌール人とでは、規模の違いがあるだけなのだ。

 単純に分裂して身を分けるパターンと、2個の個体が遺伝子(核)を交換しあってから分裂する2種類の増殖パターンを持つ微小生物であった。


「遺伝子を次代に伝える時期は、自分で選びます。大抵、老齢になってからが多い。バリヌール人はこれまで得た知識や経験を、遺伝子に記憶させることができるので、死期が近づいてから合成したほうが、より効率的なのです。和合生成には、分裂素基の提供者を何人でも選べます。二十人の分裂素基に依って生成されたこともありますし、一人の分裂素基で生成することもあります。五百年の生涯でも完成しない研究を手がけている場合、多にしてそうする傾向があります。十代掛けて、或る天体を観測し続けた例もありました」

「ほほう……。五百年。長命ですな」

「そのくらいになると、身体の調整能力が著しく落ちてくるのです。それで、我々は次代に後を引き継ぐのです。バリヌール人の寿命がどれほどまで在るのか、はっきりしたデータはありません。自然死するまで、誰も待たないので……」

「それで、君は何人の分裂素基で、えー、生成されたのかね?」

「一番多くを提供したのは、リザヌールでした。他に二人。そして、地球人です」

「リザヌールって?」


 ミーナがやっと、口を挟んだ。


「う……ん。強いて言えば、調整官でしょうか? 多岐にわたる全バリヌールの知識を統括調整すると言ったらいいでしょうか? うまく表現できる言葉がみつかりません」

「それで、地球なのね? あなたの中に、地球人の……レオンハルト・フォンベルトの血が流れているから。それで、地球に帰ってきたのね」

「シャフトナー博士もそう言っていました」


 ライルの目が細まった。


「体型に地球人の男を選んだのは?」


 モリスは、質問を重ねる。


「別に深い意味はないのです。モデルが男性だったから。それにまだ、成長期であったので、雄性のほうが形成が楽だったのです。雌性は体内器官を含め、分泌腺まで形成する必要がありますから。時間が余りにもなかったのです」


 それから、モリスに気になっていた事を、臨床医の顔で確認する。


「形状はどうでしょう? 担当医は原型が破損消失しているので、確証が得られず、保証は不可能だと言っていました」


 それに対し、モリスは真面目に評価を述べる。


「いやいや、状況を考えたら、よくできていますよ。ただ、表皮と同じように全て単純化しすぎてますね」


 ふんふんと頷きながら、


「もっとも、表皮もただ体表を覆っているフォルムに過ぎないようだがね。その下の組織も神経束もまったく異質の組成だ。その皮膚はもう少し皺とかあったほうがよかったね。汗腺の穴も表に無いし、体毛も忘れている」

「ああ、それは、私も地球に来て気づきました。全く念頭になかったようです」


 ミーナはため息をついて、席を立った。


「あなた方科学者って処置なしね。どうぞ、心行くまでお話しなすって下さいな。わたしは帰るわ。ライル、また、明日来るわね。あなたの意識が戻って、とても嬉しいのよ」


 ミーナはライルの唇にキスをすると、院長に挨拶し、手を振りながら出て行った。

 モリス博士は信じられないように、首を振ってみせた。


「驚いたね。彼女にとっては、君が宇宙人だろうとなかろうと、関係ないようだ。あんな美人に愛されて、君は幸せ者だ。わたしも、もう少し若かったら、君と張り合ってみるんだがね」

「愛? 愛って、何でしょう?」

「…………」


 モリスはどう説明したらいいだろうと悩んだ。性のない種族に、微妙な男女の愛が理解できるだろうか?


***


 ハリス長官は、ぼんやりと机の上にいる黄色いネズミを見ていた。ネズミは小さな機器に向かって、盛んにキイキイと喋っている。


 ――こいつらは何なんだ? 俺は何をしている?


 深い霧の中から、おぼろげな意識がもがき浮かんできた。途端にぎりぎりと激しい頭痛が襲ってくる。出掛かった意識は、再び忘却の彼方へと沈んでしまった。

 ネズミがハリスを振り向いた。冷たい視線でじっと見る。ハリスはTELに手を伸ばした。


 ***


 ギアソンの所へ、アレックスからTELが掛かってきた。画面から血相を変えた彼の顔が飛び出してきそうだった。


『ニュースを見たか!』

「ああ、今、見ているところだ」


 ギアソンがテレビに心を奪われながら、返事を返す。


『すっぱ抜かれた! 情報を漏らした奴を調査中だ。とんでもないことになるぞ!』


 テレビでは、興奮したキャスターがセンセーショナルな言葉を並べ立てながら喚いている。カメラがアカデミー付属病院を色々なアングルで捉えていた。病院の警備員と報道関係者達の間で、いざこざを起こしているのも映っていいた。


『問題は、この情報が軍事機密として流されている点だ。各国で殆ど同時に流れている。アメリカが異星人の優れた科学力を独占し、世界に対して圧倒的優位に立とうとしているとね』

「信じられんな。よくもこんな途方もない話をどこも本気で捉えるとは」


 報道員の一部が、ガードを破って病院内に入った。後続も続こうと強引に押し上げている。


『時期が悪かった。例の疾病が世界中を震え上がらせていた。アメリカの実験ミスだったと言う声まで、もう出ているんだ。もっと悪い憶測も出回っている。それに、ここだけの話だが、ライル君のUWCスキャン映像データが、インターネットで公開されているらしい』

「何だって! そんな馬鹿な!」


 ギアソンは飛び上がった。

 テレビからガラスの派手に割れる音がして、歓声とともに報道陣が病院内へ雪崩れ込む様子が見えた。


 大統領から国家安全保障会議(NSC)の召集がかかる。三十分後、ギアソンはホワイトハウスの会議室に着席していた。

 大統領は前置きなしで直ぐ議題に入った。ギアソンは出席者の顔ぶれを見た。副大統領、国務長官、大統領補佐官等定例メンバーが全員揃っている上に、ハリスNASA長官やアレックスまで顔を揃えていた。


「事態は一刻も猶予ならん」


 国務大臣が大統領の気持ちを代弁するかのように言った。


「何よりまずいのは、全世界的に報道が流され、誰もがそれを聞いたことだ。一般大衆の多くは、報道されたことをすっかり鵜呑みにしてしまうだろう。この瞬間にも、様々な団体や機関から抗議のメッセージや問い合わせが殺到している」

「既に、大小のデモが起こっています」


 と、補佐官が補った。


「ライル・フォンベルトが、軍の最高気密として保護され、その科学力を使ってアメリカが世界に対し、独裁権を行使しようとしていると言う誤情報が、実にまことしやかに報道され、しかもかなりの割合で信じられているのです。どうやら、その情報の出所が非常に信頼できる筋から流れ出た為であるらしいと、推測されます。すでに、ヨーロッパ各国政府、および中国政府からは、非公開の姿勢に対し強く抗議する声明が出されております。国連でも真偽を糾弾する強い姿勢を正式に決定しました」

「我々にとって、非常に不利であることは、例の疾病の一件があるからです」


 ハリスがここぞとばかりに身を乗り出してきた。


「疾病が、これまで地球上で発見されたことのないものであり、しかも既知の病気と比べて、恐るべき速さで拡がり、効率的に人を死に至らしめました。事実、酵素体の完成がもう少し遅れていたら、世界は壊滅的な打撃を受けたことでしょう。もちろん、我々はそれが地球外の病原体であることは知っているわけですが……。そして、いかにも我が国が最初に罹病したかのように疑われる感染の現状。更にまずいことに、ライル博士のいた我が国の病理研究所で、酵素体を完成する前から、罹病患者を治癒させていた事実があることです。これは、CIAも承知のことですが、今回の疾病の一件は、我が国の生物兵器の漏出に因るものではないかという考えがかなり根強く広まっています」


 ハリスが視線を向けると、アレックスはむっつりと首肯した。それは、深刻な事態にまでその種の流布が広まっているということを裏書きしていた。


「そして、その開発に例の異星人が絡んでいるというのかね? ひどい誤解だ」


 副大統領が渋い顔をした。


「その誤解で、過去、戦争が始まった事例もある。今回、世界中を取り巻くメディアがそれを増長させているのだ」


 と、補佐官。


「彼が報道機関に捕まっていればよかったんだ。そうすれば、人々の関心は彼一人に集中する。ところが、彼は病院から逃げ出していた。どうやら、院長のモリスが彼を逃がしたらしい」


 と、アレックスも苦い顔。指でテーブルをコツコツ叩いている。できるなら、葉巻をふかしたいところだった。


「おかげで、我が国はますます立場を悪くした。彼を政府機関で隠したと思われている。そして、各国の情報機関が、彼を捕らえ自国へ拉致しようと、続々と集まっている」

「火星へ発った調査隊からは、何か報告はきていないのか?」

「疾病の凄まじい有様の報告だけですな。一つ、朗報が。ヘラスシティで赤ん坊の生存者が発見されました。地球には、三日後に帰還予定です」


 ギアソンが答える。大統領が言った。


「我々としては、誤解を解くべく最善を尽くさねばならない。私も早急に声明を出すが、諸君も積極的に活動してもらいたい。事態の緊迫度は、どうかね? アレックス」

「予断は許しません。最大級で緊張度が高まっています。いくら世界的に誤報が流れたとはいえ、普通、此処まで政治情勢が緊迫することはないのですが……」


 アレックスの言葉に、ハリスが甲高い声で主張した。


「何者かの工作だとでも言うのかね? いるかどうかも分からない侵略者のせいだと? わが国家の安全を守るためには、一刻も早く異星人を捕らえ、そして殺すことです」


 ハリスの言葉に、ギアソンは腰を浮かせた。


「彼の存在が、各国の神経を逆撫でしているのですよ。地球の軍事力など稚戯にも等しくなってしまう科学力。それを我々が手にしつつあると思っている。軍事関係者達はぴりぴりしてますよ。各国政府だって力のバランスが大きく片寄る事を心配している。そのくせ、その技術力を自分達が手にしたいと思っているのです。もし、彼が他の政府の手に渡ったらと考えてみてください。或る国に渡ったら、どれほど危険なことになるか。世界を征服しようと考えている国が、或いは団体がないとは、言い切れますまい」

「彼は、本当にそういう技術力を持っているのかね?」

「分かりません。しかし、彼のこれまでの活躍を見る限りにおいては、かなりの知識を持っていると言って差し支えないでしょう。彼の存在は、我々にとっても、危険なのです。そして、世界中を疑心暗鬼に巻き込む要因なのです」

「しかし……。あの青年には、悪意は全く無い。国家の為に、罪のない個人を犠牲にして良いのだろうか。彼の持つ知識が失われることも、いかにも惜しい」


 ギアソンが言うと、ハリスは彼に冷たい視線を送った。


「ギアソン国防長官、あなたはやけに彼の肩を持つのですね。国家の為に、個人を犠牲にすることは良くあることです。まして、奴は人間じゃないんですよ。躊躇うことはないのです。それとも、格別な理由でもあるのですか? ひょっとしたら、情報を流しているのは、あなたなんじゃないのですか? あの異星人とつるんで、何を企んでいるのです?」


 ギアソンは怒りで真っ赤になった。


「侮辱ですぞ!」


 ハリスに掴みかかろうとするのを、アレックスに押さえられる。ギアソンはその手を振り払って、憮然とした表情で椅子に腰かけた。


「私の評価は、これまでの私の経歴と行動の事実が証明してくれることでしょう」


 と、ハリスを敵意のこもった目で睨みつけた。


 ***


 ライルが体調整能力を使って自らを治療しているところへ、モリス院長が顔色を変えて駆け込んできた。

 彼は一瞬、用件を忘れ目の前の光景に陶然となってしまった。


 紫の光輝が陶器のような硬質を帯びた身体を包んでいる。光の中の青年は静かに目を閉じて動かない。

 この輝きは何かの反応の結果に違いないと、彼は思った。

 あの光の周波数を是非とも測定せねばならん。紫外線領域に掛かっているかもしれん。

 そして、はっと飛び込んできた理由を思い出した。


「ライル君! ここを急いで出るんだ!」


 ライルは体調整をさっと解除し、半身を起こした。それを見て医師が目を剥く。


「起き上がれるのか?」

「ええ、なんとか。どうしたのです?」

「テレビのニュースで、君の正体をばらしている。すぐに、報道の連中がどっと押しかけるぞ。野次馬もわんさと来て、君はぼろっきれにされちまうだろう。動けるんなら丁度いい。早く逃げるんだ」

「逃げろと言っても……何処へ?」


 ライルは途方にくれた。突然言われても、当てなどない。モリスはじれったそうに、身を捩った。


「何処だっていい! 私が連れて行ってやる。貴重なサンプルを訳も解らぬ無能な連中に横取りされてたまるか!」


 つい、本音が出てしまう。ライルはにっこりした。その気持ちは彼にもよく解るものだった。

 治療服の上に白衣を羽織り、彼はモリス博士の肩を借りながら、裏手の非常口へ急いだ。彼の背後で、非常口の重いドアが閉まったのと、テレビ局ら報道関係者の群れが駆けつけて来たのが、同時だった。

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