Take-46 映画『ドクター・スリープ(Doctor Sleep)』(2019)は面白かったのか?

 たまには新作映画の感想でも書かねばなるまいと、先日12/1「映画の日」に大急ぎで見てきたのが本作『ドクター・スリープ』。


 眠い目をこすりながら朝イチ9:00の回へと向かった先は巨大なゴジラがビルから顔を出すあの映画館。するってーと、結構な数の老若男女が並んでるじゃあーりませんか! 


 ( ̄▽ ̄;) ウゲゲ……


 初回なら余裕だろと思ってたけど日曜日の「映画の日」をなめてましたわ。



 まあ『アナ雪2』も始まったばかりですし、仕方ないやね。てか、映画産業不況といわれる現在。また、二時間じっと座ってることを我慢できない人が増えている──なんてことも話題になってましたが、料金が1000円くらいに下がれば──なんだ映画館だってまだまだイケるじゃないかと、むしろ良い気持ちで並びにつくことができました。


 当日券だったんで席もギリギリ確保。あっぶね~あぶね~。満席だと入場できなくなったのは、はて、いつの頃からだったか?


 以前は混んでる時など一番後ろで手すりに寄っ掛かりながらで立ち見とか、みんな普通にやってたのにね(笑)


『E.T.』や『ドラえもん』など、八百屋のダイコンのごとく通路の階段で座らされて観た覚えがありますわ。まあ、ちゃんと座れるに越したこたないですけど。


 てなわけで、ほよよっ! N区からおはこんばんちわ、ペイザンヌだよ。んちゃ!(ほ、ほら、ここ、ツっ込むとこだよ、ホラ、今回の映画のタイトル、Dr.ス………)


 ありがとうごにゃーます。皆様の心の突っ込み、しかと受け取りました。

 m(__)m


 そんなわけで、いざコレを書こうと思い、いつもテーブル代わりに愛用しているリンゴの木箱に向かったのでありますが……


 わしゃにはいまだ慣れてないことがいくつかあります。


 ひとつはモテること(モテたことないので慣れるとかじゃない)。


 ひとつは褒められること(褒められたことないので慣れるとかじゃない)。


 そしてもうひとつが最新作の感想を書くこと。


 そもそもこのエッセイ『あの映画は面白かったのか?』というタイトルからしてですね、多くの人がすでに知ってるであろう映画を「まあ鍋でもつつきながら気軽にワイワイ話しましょーや、ささ、どぞ、まずは一杯、おっとっと……」てのが理想なわけでして。新作映画なんてもなぁですね、町山智浩か名の知れたブロガーさんにでもまかしとけばいいんだよ!──って、感じでありますので、さて困ったなこりゃ。

(´・ω・`)



「この映画は『シャイニング』から40年後を描いた正統な続編であり、前作で少年だったダニーは今では精神を病みアルコール中毒に苦しんでいた──」


 ……ぬゎ~んて歯の浮くようなそれっぽいことわしゃが書いてもねぇ。なんだか出来の悪い出初め式みたいじゃないですか。どこまでネタバレしていいのかってのも程度がわからんし。なのでまあ適当にいつも通り。



 キングの劇場映画作品は40本ほどあり、昨年、未見のものをまとめて観た時期があったのですが、数が多い分、良くも悪くも当たり外れがあるわけで。いや、これは当たり外れというより「好きか嫌いか」のアクが強いんですよね。自分は好きでも他人はダメということがことさら多い(笑)


 さて、本題『ドクター・スリープ』ですが──


 ズバリ。この作品は『シャイニング』とは『別物』であります。


『シャイニング(1980)』の続編と思って見ちゃうと、ちと「ん?」となるだろうし、逆を言えばこれみよがしな点が鼻につくというか。



 キャッチコピーの『呪われたホテルが再び目を覚ます──』てのを勝手に解釈してるとニュアンスがかなり違ったりして戸惑うかもしれんし。


 かといって、完全に「別物」として区分けしてしまうと「んじゃいったいなんの映画なんだ、コレ?」となるのも確か。実にやっかいな映画です(笑)



 なので『スティーブン・キングの世界』の中で行われている一つの映画──として見るのが正しいと思われます。「それがなんと、あのシャイニングとクロスオーバーしちゃうよ♪」くらいがよろしいかと。


 では『スティーブン・キングの世界』とはなんぞなもし、兄さん? と問われるとガチなマニアの方ほど詳しくはないのですが、基本は『ダークタワー(2017)』を観るとよくわかると思います。むしろ『シャイニング』よりそちらを観ておくべきではにゃいかと、わしゃは声を大にしてゆいたい。



 キング小説の共通概念としてまず、パラレル的にこの世界とは違うもう一つの世界があるわけですな。そこでは絶対的な悪が存在しており、そいつらがちょこちょこ動くことにより、間接的にこちら側の世界で起こる悲惨な事件にも影響してくる、と。



 わかりますかね? 例えば『ニードフル・シングス(1993)』なんて作品はその辺わかりやすく伝わってきますやね。


「君の欲しがってる野球選手のプロマイドをただであげよう。その代わりちょっとした悪戯をしてほしい──」そんなことを言う爺さんがとある小さな町で店をやってるんですな。その「ちょっとした悪戯」を大勢に少しずつやらせることで町が次第にが狂ってくるわけですね。あげくは町の崩壊、世界の……となっていくオハナシ。これがなかなか面白く、キャストもエド・ハリス、マックス・フォン・シドーなどの重鎮、さらにはチャールトン・ヘストンの息子であるフレイザー・C・ヘストンが監督しております。



 んで、そんな中でも時たま直接的に「化け物の姿」のまま、こちら側の世界に顔を出しちゃう奴なんかもいまして、それが『IT(1990/2017-2019)』のピエロ、ペニー・ワイズしかり、『ミスト(2007)』の怪物どもであったりと。言ってみれば彼らは、本作『ドクター・スリープ』に出てくる「悪役」たちと同郷ということができます。これは余談ですが『IT』の意味は「それ」ではなく「鬼」という意味合いがあるそうですな。へぇ~。



 また、こちら側の世界にも「彼ら」の存在を意識でき、「窓」の役目をする人間がまれにいるわけですな。それが“シャイニング(輝き)”という特殊な力を持った『ドクター・スリープ』の主人公であり『シャイニング』のダニー少年。そして、今回サブとしてチート的な魅力を発揮してました──アブラという少女。



 チートといえば『ダークタワー』でも「死ね」と言っただけで本当に相手が死んでしまうというとんでもない能力を持ったラスボスがいましたやね。マシュー・マコノヒー演ずる「黒服のウォルター」です。いや、こいつ倒すの無理ゲーだろ!──とあの絶望感が実によかった。


『ドクター・スリープ』でもそれに似た能力を持つ者が出てきましたが今一つ使いこなせないまま終わってしまったというか、ちと残念。



 そんな感じで本作はその「こっち」と「あっち」のいざこざの物語のひとつ──キング作品全体のひとつとして捉えればあら不思議、なかなかこの『ドクター・スリープ』面白いんですね。と、いうより近年の作品の中では『スティーブン・キングの脳内世界』をかなりうまいこと表現できてるのでは(むしろ『IT』とかより)とも思いましたが、マニアの方、その辺いかがなんでしょうかね?


 特に、意識だけを幽体離脱させ、相手のもとに飛ばすシーンの「浮遊感」といったらなかったですな。


「あっちとこっちの世界」といえば、キング小説では『タリスマン』なんて名作もあり、こちらはスピルバーグが半永久的な映画化の権利を買い取って温めているということでしたが、今年3月に発表されたのはマイク・ベーカーという監督で映画化決定とのことでした。『タリスマン』はホント「やるやる詐欺」が続いてましたので、これも頓挫しないことを祈ります。


 来年1月には『ペット・セメタリー(1983)』のリメイクも公開されるとかで。すげえすね、キング。ここんとこ月イチペースで公開が続いてるよ。



 個人的には初期の作品『死のロングウォーク』、むしろこちらの方を早く見たいのですが……まさかオクラになっちゃったんじゃないよね! 最近あまり噂を聞かないんだけど、大丈夫かな?


 さて前作『シャイニング』はあまりに違いすぎる、芸術的過ぎると原作のキング氏はおかんむりでしたが、今回の映画はOKなのか……な?(笑)



 そう、キングはあくまでも庶民の味方なのです。B級エンタメホラーの「王」なのであります。芸術になっちゃあかんのです。まあ、今回の作品はホラーとは言っていいのかすら微妙でありましたが(まあ、だからこそホラーが苦手なわしゃも足を運べたのですがね)。



 わしゃは大画面で『シャイニング』を見たことがなかったので、今回はスクリーンで疑似体験というか追体験することができてそれが嬉しかったですね。そんなシーンが……おっと、あまりこういうのは言わない方がいいのかな。



 そして、今回ジャック・ニコルソンは……? どーなんだ? ひょ、ひょっとして……? あるのか? あるのか? ゴニョゴニョ……。ぐあ~! やっぱり最新作は喋りづらいっ!

( ノД`)……



 キング自身も「どこかに」出てる「らしい」ですが、「俺が出ると売れたためしねぇんだよ! コンチキめ」ってことなんで今回は大々的に公言するのを控えたらしいです(笑)



 ちなみにタイトルの『ドクター・スリープ』。これは『おくりびと』的な意味合いだそうです。その真意は劇場で♪(どこからも金はもらっておりません)


 あ、そうだ。ついでなんですが……


 昔からわしゃ疑問に思ってるんですけど、『シャイニング』のオープニング──空撮のシーンでヘリの影が道路に露骨に映ってるじゃないですか? アレ、なんでなんすかね? ミスなの? にしては完璧主義のキューブリックがそんなの許しますかね? それともわざとなの? 理由があるの?


 このことについてはあんまり、いや、結構どこにも書かれてないんで、不思議でしょうがなくて。


 わしゃの記憶違い?「そんなの映ってねーよ!」ってことになるとまたマンデラ・エフェクトを主張しなきゃなんねーなと。

 ( ̄▽ ̄;)


 もし、知ってる方がいたら教えてくださいませ。

 m(__)m








 あと、こちらと姉妹版の『あの本は面白かったのか?』を載っけてみました。ついでのついでくらいでよろしくお願いしまっす♪


 では、今回はこんなところで。

 バイちゃ!




【本作からの枝分かれ映画、勝手に三選】


★『レディ・プレイヤー1』(2018)


 ……あれ? ここ最近『シャイニング』は見てないのに、なんで記憶に新しいんだろ?と、思ってたら、そうだ、この映画で見てたんだった。主人公たちが映画『シャイニング』の世界にヴァーチャルで行くってエピソードがありましたが、これ楽しそうだ♪(そうか?)


 けっこう長尺でメインストーリーとして組み込まれてましたもんね。エレベーターの血やら雪の迷路など「このあと物語がどうなるかを知ってるからこそ、ヤバイ!」てのは面白かったすね。



★『スペース・バンパイア』(1985)


 ……『ドクター・スリープ』には特殊な能力を持った人間の精気を吸いとり、それを糧にする者たちが出てきます。


 けっこう残酷なシーンでしたが、それに群がり獲って食おうとする(スチームを吸おうとする)彼らの演技は野生動物のそれっぽく、なかなか見ものでした。


 吸血鬼が生き血を吸うというのは数あれど、人間の精気を吸いとるというのは、今でこそ定番ですが、この『スペース・バンパイア』が公開されるまでは、わりとマイナーだった気がします。あったかもしれないけれど、ここまで視覚的にやってくれたのはは初めてだったのでは? と思うくらい。


 そういえば、キング作品、トム・ハンクス主演の『グリーン・マイル(2000)』の中でも邪悪なものを吸い取ったり吐き出したり、ってのがありましたね。これもやはりリンクしてるのかな~なんて思っちゃいます。


 映画はともかく、この作品のテーマ曲ってテレビとかで頻繁に使われてましたよね。知らない人でも耳にすれば「あー、これってこの映画の曲だったんだ」と思うくらいじゃないのかな(笑)


 しかしやっぱり『スペース・バンパイア』といえばアレですわな。惜しげもなく全裸で町を歩き回るマチルダ・メイのおっぱ……コホン、失礼。



★『ファミリー・シークレット』(2014)


 ……やはりキング作品から一本と思い、こちらを選んでみました。真面目で、愛妻家の会計士。そんな夫が実は連続殺人鬼だということを知ってしまった妻は……。


 これも賛否両論なのかな~(笑)


 個人的にはヒッチコックの『疑惑の影(1943)』みたいでなかなか面白かったし、正体がバレてからお互いがどうするか──という展開はもすごく満足いった一本なのであります。


 言ってみりゃ妻にはナイショで好き勝手やってた夫と、それ以外にはこれといって不都合も不満もない妻。何を隠し、何を我慢し、何に妥協するか、というのは、ごく普通の夫婦にもあるだろうし、そこを極端にデフォルメした感じはなかなか興味深かったですな。


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