番外編5

順位よりも順番のほうが大事なのです。

 あれ? さっきも見たなコイツ? と思われた方もおられるかもしれません。

 こんばんは。今回は1日複数回更新です。ちょっとがんばりました。


 雑誌編が終わりまして、今回やっと、もっとも書きたかったことについて触れることとなります。



 カクヨムさんがオープンして1年が経とうとしております。第1回WEB小説コンテストやエッセイコンテストなどの書籍化も相次いで発売されるようになってきました。


 そこで気になるのは、やはり「売り上げ」についてなのではないでしょうか。


 下世話なことでしょうけれど、出版するとなってはどうしても売り上げというのはついて回ってきます。


 私も書店員時代、自店の売り上げランキングとは別に、よくふたつのランキングを毎日にらめっこしていたものです。


 それはAmazonランキングと、取次さんの集計した全国ランキングです。それにくわえて、レジから送信された売り上げを集計した「POSデータ」を収集しているランキングサイトがあるのでそこを参照したりもしました。


 今回のお話はその中でも大手通信販売サイト・Amazonさんのランキングについてです。



 Amazonのランキングは参考になるのでしょうか?

 中には、書店での売り上げとは明らかに異なっており、参考にならないとおっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 


 以前少し触れた内容とかぶるかもしれませんが……


 全国書店のランキングとAmazonでのランキングで上位にきているからといってどこでも同じものが売れるとは限らない。


 ランキングは大事かもしれないけれど、そればかりにとらわれるな、というのはよく言われていました。

 それはAmazonさんのランキングだろうと取次さんやオリコンさん、書店チェーンさんなどが集計する各種ランキングであっても同様でした。


 ランキングを見て入荷してもまったく売れないこともあれば、逆にランキング上はそれほどの順位ではないにもかかわらずある特定の書店ではなぜかバカ売れする、といったようなこともあります。


 やはり地域に根ざした書店というものですと、立地、年齢層によって何が売れるのかという傾向はおのずと出てくるものなのです。


 私の書店ですとライト文芸よりも時代小説、警察小説やお仕事小説が強く、恋愛小説のようなものはやや弱い、などの傾向がありました。一般文芸をお求めになられるお客様の層がサラリーマンやシニアに寄っていたということなのでしょう。



 特にAmazonさんですと、文芸書などよりもはるかに市場規模の大きいコミックや写真集、雑誌などだけでなく、まだ発売されていない人気作などもすべて一緒くたにされた上での数字となるわけです。


 そのような事情をふまえますと、文芸の文庫ランキングとなると、文庫カテゴリ上位であっても順位の見かけ上はやや寂しい数字となりやすいわけです。

 

 あくまでも私の体感を述べさせていただくとすれば、本すべてを含めたランキングで1,000位~5,000位くらいであれば店頭で順調に減っている部類ではないかと思っています。


 考えてみてください、毎日恐ろしい量の本が発売されています。

 そのうちの1,000番目に入るだけでも充分すごいことなのです。


 本カテゴリで上位2桁に入るようなタイトルは文字通り、どこが仕入れようが黙ってても売れるようなバケモノ商品たちです。


 ですが全国ベストセラー上位のバケモノ商品はごく一握りでしかなく、商品そのものの点数としてはそれ以外のもののほうが圧倒的に多い。

 

 黙っても売れるようなものをきちんと展開し、しっかり売っていくのももちろん大事なのですが、それよりも――それ以外のものも大事にしつつなるべく売っていくことも同時に求められているわけです。

 

 などとエラそうに言いながらも、私はこのあたりのケアが充分とは言えなかったと思います。どうしてもベストセラー優先になってしまい、新人さんには厳しくなりがちだったのが私の文庫担当時代の反省点ですね……

 カクヨムさんに関わるようになって書籍化作家さんもちらほら出てきてからというもの、申し訳ない気持ちに襲われるようにもなったものです。

 


 ……話を進めましょう。

 

 よほどの上位タイトルでもない限りAmazonランキングの数字にはそこまで意味はありませんが、カテゴリを文庫やライトノベル、さらにレーベルごとに絞った上での順番を見てみますと、案外店頭での減り方と似たような動きをしていることに気が付きました。


 つまりはランキングの数字そのものよりも、絞り込んだ上で表示される順番を見たほうが参考になるということなのです。


 少なくとも、私のいた書店ではそうだったと思います。

 

 出版社別で注文する機会が多いので、出版社別の販売傾向を見るのであれば非常に「使える」サイトであると、少なくとも私は認識していました。


 書店にとってはライバル関係にあるといろいろな場で言われたりする会社ではありますが、多くの方によく使われているサイトだけあって、そこで得られる情報を頼りにしていたような面もあります。

 

 書店さんとこの会社との関係はなかなかに複雑なものでありますね。



 ただ、ネットで見える書籍ランキングというのは、目まぐるしく変わります。

 

 店頭に行く必要がない分利用者さんの意識がダイレクトに出るのです。リアルタイム性が高いぶん観測には充分な注意が必要となるでしょう。その時たまたま上位になっただけ、というケースもないとは言い切れませんからね。


 また新刊も続々出てきますから、ランキングを参考にして大量仕入れしたところで入荷した頃には冷めてしまっているかもしれない怖さもありましたね。通常の発注ですと、注文しても1週間~2週間ほどはどうしてもかかってしまいますから。


 そういう意味でも、その場でのランキングばかりに気を取られてはいけない、という私が聞かされ続けた助言は正しいように思えました。 



 以上、エラそうにいろいろな意見を述べさせていただきましたが――


 これはあくまでも文庫を一年ほど担当したというだけのド素人が一個人の感想として書いているだけなので、ここの内容が絶対ではないことは強く申し上げておきたいと思います。


 もっと経験を積むことができれば、ランキングの見方もまた変わったかもしれないですし、新人さんの可能性に懸けてもっと冒険できたかもしれません。



 最後にちょっとだけ本屋的裏話をさせていだたくとしたら……

 Amazonさんに書かれたレビュー。あれを参考にしてPOPを書くこともありました。書店員さんはあれ、意外とけっこう目にしていると思いますよ。


 

 番外編でぶっちゃけすぎだろう、と各方面からお叱りを受けない限りは次回また……といつもの流れでお別れしたいところなのですが……

 詳しくは次回の更新をご覧ください。今後の予定はそこでお話させていただきたいと思います。それでは、また。

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