時代小説のレジェンド『月刊佐伯泰英』大先生
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
お正月に更新するなんてさてはお主暇人じゃな? とか言わないでください、ぼっちなんです察してください……(泣)
『orange』みたいにお正月にお参りする恋人とかいるわけがなく。
まあこんなところで言う話ではないですね、はい。本題に移らせていただきます。
小説界には「いつ寝てらっしゃるんですか」という感想を漏らしてしまうほど非常に多作な作家さんがいらっしゃいます。
その例は一般小説でいいますと、ご存知東野圭吾先生。本を読むならまず知らない人はいないというレベルに知名度の高い作家さんですが、驚かされるのはその多作ぶり。しかもそれがほぼ例外なく大ヒットしているのですから、まさに怪物作家であるといえます。KADOKAWAさんからも映画化が決まっている『ナミヤ雑貨店の奇蹟』など多数作品が出版されています。
私が文庫担当をはじめたくらいの時期に文庫版が発売され、相当長い間平積みにさせていただきましたが売れました。何を売ったらわからなかった状況で非常に心強かったことを覚えています。
あとは西尾維新先生も超速筆で有名ですよね。『物語』シリーズは100パーセント趣味で書かれているそうですけど好きでもあのレベルの刊行速度は異常とか言いようがありません。しかも
ライトノベル業界にもそんな怪物作家さんがいらっしゃいます。
なんと28ヶ月連続の新刊刊行を達成、しかもそれが同一のレーベルであるというから驚きです。
その人物とはこれまたご存知電撃が誇る大人気作家、かまちーこと鎌池和馬先生。
文庫担当時代、「この人毎月出してない……???」と震え上がったものです。おかげで鎌池先生だけで棚を2列ぶん使ってましたらかね。
しかも以前紹介した食品保存容器収納テクニックを使ってそれです。
『SAO』川原礫先生の全作に派生の『ガンゲイル・オンライン』全部合わせてもそこまでいくか怪しかったことを考えましたら、どれだけ恐ろしいことかおわかりいただけることかと思います。
通常はひとりの作家さんだけでまるまる1列占めるとか、小型店ですとよほどのことなんですよ。
いや、川上稔先生のシリーズを置いておけば棚1列くらい簡単に行くだろ、ってツッコミはなしでお願いします、アレはノーカン(笑)
実は時代小説界にもすごい人がいます。
それがタイトルにもさせていただいた『月刊佐伯泰英』と言われるほどの多作を誇る
もともと時代小説の先生方は非常に多作かつ速筆の方が多いことは以前のエッセイでお話しましたが、この方はその中でも群を抜いておられました。
何ヶ月も連続で何かしら刊行されるのが珍しくないばかりか、1ヶ月に2作文庫が出るなんてこともあり、それに合わせて平積みを仕掛けたりしてました。月に3作に出てたこともあったような……?
しかも1作1作が凄まじく売れるのです。それこそ先述の東野圭吾先生レベル。
特に去年に完結した、双葉文庫さん刊の50巻にも及ぶ大長編シリーズ『居眠り
私のいた小型書店でも、月に50冊近く売れたのですから、大きなところではそれこそ桁がひとつふたつ違うレベルの数をさばいたのでしょう。
このレベルで売れたのは『ビブリア古書堂の事件手帖』しかなかったと思います。
他社刊のシリーズも油断していたらすぐに平積みがなくなってしまうほど。
棚に差していたシリーズの既刊に至っては、佐伯先生と、名前順で順番が近い司馬遼太郎先生だけで、大きな棚まるまる1枚ぶん使ってしまうくらいの勢いでした。
棚1列とかそういうレベルじゃないんですよ、いや冗談抜きで。
時代小説、歴史小説といえばやはりといいますか司馬遼太郎先生がド定番で、流行にかかわらず毎月何かしら絶対売れてくれるのでびっしりと揃えるのですけど、司馬先生の多くの著作を合わせたのと同じくらい、佐伯先生のシリーズで本棚が締められるのですから、ある意味荘厳です。
少し大きめの書店へ行かれた時佐伯泰英先生でチェックしてみてください、きっと驚くことだろうと思います。
ともかく、いち書店員としては佐伯先生に足を向けて寝られないレベルで感謝してもしきれませんでしたね。ということで、ライトノベルや一般文芸とは違うベクトルの売れ線が、そこにはあったのだと言えると思います。
その佐伯先生で有名なエピソードをお話しましょう。
実は意外なことに当初はミステリーと警察ものを書いておられたのですが、デビュー以来20年ほど、長い間芽が出ず小説家をやめるかの瀬戸際に立っていたそうです。
そこで1999年、心機一転はじめて時代小説を書いたところ瞬く間に大ヒット。
以後は時代小説でトップをひた走る押しも押されぬ売れっ子作家になったのだそうです。人間何が転機となるかわかりませんね。
時代小説の世界はみなさまがお考え以上にベストセラー作家にあふれています。
私のいた書店でド定番だったシリーズものを持った作家さんを列挙させていただきたいと思います。
『くらがり同心裁許帳』シリーズ(光文社文庫)などの井川
『表御番医師診療禄』シリーズ(角川文庫)などの上田
『
『鬼役』シリーズ(光文社文庫)などの坂岡
『はぐれ長屋の用心棒』シリーズ(双葉文庫)などの鳥羽亮先生
これらの先生方のシリーズは手堅く売れるので発注を切らしてはなりませんでした。
あとは『しゃばけ』シリーズ(新潮文庫)などの
文庫書き下ろしの作家さんではないものの、『水滸伝』『楊令伝』(集英社文庫)などの北方謙三先生のシリーズは常に目立つところに展開していましたね。
あ、あと『
以上挙げてきた時代小説の作家さんは大御所様が多いのですけど、若い時代小説作家たちが台頭してきていたのが私のいた頃からの特徴でしょうか。
高橋
若い世代の時代小説、って案外多くて、ラノベとも見まがうようなイラストの表紙も珍しくなくなったのが私のいたあたりからではないでしょうか。
なお以前の書店では吉川英治先生や柴田錬三郎先生なども扱っていましたけど私の担当した店についてはほぼほぼ取り扱ってなかったです。これはスペースの関係でやむなくですね……このあたりは致し方ないですね。
……と、挙げればきりはないですけど、だいたい時代小説・歴史小説の作家先生にはある程度触れられたかな、と思います。とはいえいかんせん小さな書店でしたのですべてをカバーしきれてはいないことでしょう。
ともかくこの場では、ライトノベルとも一般文芸ともまったく別の領域で売れているジャンルがあるんです、ということを結論とさせていただきたいと思います。
いつもの雑な締めですみません……!(笑)
次回更新は少し文庫担当時代を離れて、こちらもまたずっと書きたかったもののなかなか機会に恵まれなかった雑誌担当時代について触れていきたいと思います。どこまでみなさんのご興味をひくことができるか不安ではありますが、またお会い出来る時まで。
改めまして、今年もよろしくお願い致します。
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