あなた色に染め上げて

 久しぶりの更新になります。おはようございます。

 センセーショナルなタイトルではじまりました今回の更新。

 これからお届けいたしますのは、私が出逢ったある常連客さんについてです。



 私のいた書店は形式上会社でしたが、小さな個人経営のお店です。

 そこには非常にゆるいといいますか、下町的な、和気藹々わきあいあいとした空気がありました。

 時には非常に長い時間話し込んだりするような方もいらっしゃいました。

 あ、もちろんお客さんがほかにいらっしゃらない場合に限りますよ。

 

 そんな常連さんの中に、ある若い女性がお一人いらっしゃったのですが、なんとその方、時には我々のお仕事を手伝ってくださったりしていました(笑)

 納品された本のチェックを手伝ってくださったり。

 時にPOPを描いてくださったり、なんてこともあったらしいです。


 いや、もちろん本来はダメなんですよ? 棚に並んでない段階のお店の商品を勝手に触らせるなど普通の書店なら言語道断。この話を目にした他の書店員さんなんかは、あまりのことに眩暈を覚えるかもしれません。


 流石にそれほど特別に扱われた常連さんはその方くらいでしたし、それだけ信頼されていたということでもあるのですが……


 あくまでも私のいた店舗でのみなんとなく許されていただけであることははっきりと述べておかねばならないでしょう。

 間違ってもほかの店舗で売り場に出ていない本を触ろうとしたり、段ボールなどの梱包を開けたりなさらないでくださいね。



 とはいえ、このことは今回お話ししたい主題ではございません。

 あくまでもお店からそれだけ信頼を得ており、スタッフとも非常にくだけた関係を築いていた、ということだけ念頭に置いてくだされば問題ないでしょう。

 

 それよりも今回お話させていただきたいのは、そんな常連さんが口癖のようにネタでおっしゃっていた……

 

「書店を調教する!」

 

という非常に刺激的な文言についてです。


 

 その常連の方は非常にライトノベルに精通しており、ライトノベルを普段読まない前任の方に多くの助言をなさっていました。


 もちろん、それが的外れなものであったならば前任の方も耳を貸さなかったことでしょうし、お客様の度を過ぎた「指示」は私物化を招き、お店にとって必ずしもよい結果をもたらすものとはならないでしょう。

 今回お話させていただいた常連の方のケースは非常に極端なものであるということが大前提であるのですが……


 しかし、なるほどどうしてその助言は多くの場合的を射たものでした。

 

 そうです。「書店を調教する」というのはとりもなおさず、「書店にお客様の望む形に商品を仕入れてもらい、お客様の理想とするお店を作っていく」ということにほかなりません。

 そしてその方はそれを実践していたということになります。

 


 そのように調教された書店のスタッフであるところのわたくし。

 なんと、気づかぬうちに調教されちゃってたのですね……!



 ……ゴホン。

 私のいた書店はそのような冗談さえ飛ばしても問題ないほど平和かつ穏やかな雰囲気がありました。なのでお客様と会話を弾ませることもありましたが、とくに中~大型の書店さんですと、そもそも書店で声を出すこと自体はばかられるでしょう。

 ほかのお客様のこともありますし、従業員の方々も忙しくあくせく動いておられることが考えられますしね。

 このあたりはケースバイケースであり、書店員さんとコミュニケーションを図るということには大きなハードルがあることでしょう。

 

 そこでのお話ですが、みなさまにもやっていけるご贔屓の店の「調教」法は、何も書店員さんと直接話すことだけではありません。


 それはあなたの好きな本を、あなたの好きな書店さんで買う、ということです。あなたの好きなシリーズが確実に売れるのならば、その本の扱いが次からさらに増えるかもしれません。

 買った本と同じような、あなたの好きな作風のものがもっともっと仕入れられるようになるかもしれないのです。


 「なんだそんなことかよ」と思われるかもしれませんが、こうした地道な積み重ねこそが有効なのです。

 その書店に取り扱いがなさそうなのであれば、事前に予約を入れたり、定期購読の申し込みをするなどしてみるのもよいでしょう。「事前予約があるほどこれは面白いのかな?」と担当者の目に止まったりすればしめたもの。


 自分の好みの本があるからその書店を利用する、という方が多いはずです。

 でもほしい本がピンポイントで揃っているような書店さんはなかなかない。そう思っておられる方も非常に多いことでしょう。

 それならば、です。

 利用していきたいと思っておられる書店さんに、あなたが欲しいと思う商品が必ず入るような環境に仕立て上げればいいのです。逆転の発想ですね。


 学術的な本など高度に専門的なものや、洋書、小さな出版社の商品、あまりに高価なもの、買い切り商品……これらのものは大型のところでないと難しいかもしれませんが……

 ごく一般に手に入るようなコミックや書籍・文庫などならば、売れるとわかれば出版社さんや取次さんだって流してくれるようになるでしょう。

 おひとりおひとりが現物の本を実際に手に取り購入してくださる、というプロセスの積み重ねがあってはじめて、書店はさらに充実し、魅力あるものに育っていくのです。

 

 もちろん書店業界を取り巻く環境は厳しいですし、またお客さまにとって多くの選択肢がある中であえて書店で本を買う、というのは多大な労力です。強制することはできないでしょう。

 

 ですがみなさん、最寄りの書店が好きな本を置くようになったときの高揚感ときたら……! 一度体験してみてください。 

 紳士淑女の皆様におかれましては、どうか今一度――それぞれの色に染め上げてみてください(その言い方やめろ)



 書店員の方とコミュニケーションを図るのも、お仕事の状況をお読みになった上でなら積極的になさってもいいと思います。


 たとえば先程の女性とは別の方とのお話ですが、『のんのんびより』のスマホスタンド※の話で盛り上がったこともありますしね(笑)

※『月刊コミックアライブ』の2015年8月号から4か月連続で付属した、キャラクターのデフォルメフィギュアとスマホスタンドが両立した付録


 スマホささえるのん!


 あ、ここまで書いたことはあくまでも元書店員である私の個人的意見にすぎません。節度を持った付き合い方を心がけていただけますとさいわいです。



 ――などと真面目なのか適当なのかよくわからないことを述べつつ、本日はこのへんにいたしましょう。

 それでは、「不健全だ!」と眉をひそめられる方が大挙されることがなければまたお会いいたしましょう。

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