私のことはいい。でもお願い、1巻……1巻だけは……!
ライトノベル売り場。それは日常にある小さな戦場――
全国の書店では今日も休まることはない。
というわけでアニメの導入部みたいに仕立てまして、土曜日です。
こんにちは。
前回は小道に逸れて別ジャンルの話をしましたので、ここらで軌道修正。
ライトノベルの話をしましょう。
ライトノベルを店頭に揃える上でもっとも重要なこと。
それは非常に明快ではありますが、実際にはとても難しいことでもあります。
それは、シリーズの第1巻を切らさないことです。
人気のコミックにも言えることなんですが、すでに人気を確立した長編シリーズというのは、それだけ新規で買ってもらえる層が多いのが特徴です。
たとえ昔にやっていたアニメ原作であったりしても、定番の作品ならば後から知って購入する方が必ずいらっしゃるのです。
たとえばライトノベル購入層のひとつである10代のこども達の場合、自由なお金を持てるようになるまで時間がかかる場合があるということもあります。
アニメ放映当時は買えなかったけど今なら買える! 好きだったシリーズがやっと揃えられる……! そういう思いで買いに来てくれる子もいるでしょう。
誰かに勧められたとか、BD(DVD)レンタルとか――カクヨムの読者さまを想定するとニコニコ動画やYouTubeで知ったという方もいらっしゃるでしょう。
書店に入っているとわかりますが、ライトノベルの最初巻をもう刊行からだいぶ経ったタイミングで買うお客様は、制服姿で買いに来るような10代が多い。
だいたい1巻だけとか、2巻3巻くらいまでとりあえず買う、みたいな買い方をなさる方がポツポツいらっしゃるように見受けられました。
特に『カゲロウデイズ』や、『僕は友達が少ない』(通称『はがない』)などはそのような売れ方をしていたように感じます。
それより高い年齢層は最初から買いたい作家とジャンルを自分の中でお持ちなのでしょう。基本的にお気に入りの最新シリーズを発売とほぼ同時に買い漁る感じです。
昔アニメで見たりなりで気に入ったのをずっと追っているという場合もあるでしょう。
1巻から手を出すというのはアニメ化されて売り出し中の作品、という以外ではあまり見受けられなかった印象がありました。
おっと。また話が逸れちゃいました。
ともかく、ライトノベルというのはコミック同様、シリーズとなるとそれなりの巻数を伴うもの。新たに読もうとなったら当然1巻から、となるわけです。
そこで1巻が切れていたら「あ、1巻がないならやっぱやめとこ」ってなってしまいます。たくさん続いている人気シリーズも、まずは最初の1巻を手に取ってもらわなければどうしようもないわけです。
まとめ買いされるお客様もたまにいらっしゃいますが、途中の巻がひとつふたつ抜けているくらいならそのまま残りも買ってくださるのですが、1巻がないと致命的です。大抵の場合1巻がないとなるとほかを当たるとおっしゃります。
それもそうでしょう。まとめ買い、それはすなわち―ー
ああんもう待てない! 今すぐ欲しいの! 早くちょうだい!
――ということです(その表現やめろ)
なのに1巻がないんじゃ、お話にもなりません。
まとめ買いしてくださる方は「ここに来れば必ずある」と踏んで下さって、たいていほかのものもドカッと買ってくださります。
そういう方は贔屓の書店と定めれば、よほどの場合を除いてその1店しか通いません。
そのような「上客」さまを逃してしまっては書店にとって大きな損失です。
ほかの巻が揃ってないのはまだ許されますが、シリーズものの1巻がないというのは考えるよりも遥かに深刻な販売機会のロスなのです。
アニメ化のフェアについても同様のことが言えます。
出版社さんがアニメ化に合わせて各巻セットでドン!と下さる場合でも、だいたい1巻がほかの巻と比べてその倍近く入っています(2巻が少し多めの場合もあります)。
あなたさまが買い物をなさる立場で考えてみましょう。
アニメ化された作品を1話から3話くらい見て「面白い!」と思えたり、また『例の紐』みたく話題になっていたりしたら、とりあえず1巻買ってみて様子見しますよね。
つまりはそういうこと。1巻の需要はほかの巻よりも圧倒的に高いのです。
もしこのエッセイの読者さんに書店員さんがいらっしゃったら、たとえ「ちょっと多いかな?」と思えても1巻だけは強気で発注するべきです。多少余るくらいでも構いません。でなければあとで売り切れた時後悔することになりますから。
というか後悔しました。先述の『例の紐』の時。
その話はまた別の機会に譲るとして―ー
1巻が売れた! やったぁ! そしてすかさず棚の下のストックからシュッ!
そして売り場の棚にシュウゥゥゥゥーッ! ゴォォォーーーーール!
……そんなにオーバーな叫びは要りませんけど。気持ちとしては、人気作の1巻は常にストックしておいて、売れたらしっかり出してあげる。それができたら理想ですね。現実は得てしてうまくいきませんでしたけど。
今回はここまでにいたしましょう。
それでは、お客様から「私は品揃え豊富な書店なんかに屈したりしない!」と睨まれない限りは、またお会いいたしましょう。
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