第2話 リンドという少年
ベルドピルフ歴2777年
小さな村に一人の少年が産まれる、名は「リンド」
小さな村ゆえに身分も貧しく名前に苗字は与えられないのだ。
リンドは何不自由無く育ったという、村の子達とも
仲良くそしてたくましく育った、だが一つだけ
他の人とは違う所があった・・・
それは生れつきに首にアザがあった
シミやソバカスの類ではなく、精巧に彫られた刻印のようであったとされる。
リンド自身はそれを気にとめることもなく日々を過ごしていった、それが重大な試練の狼煙となる事も知らずに。
そして幾年がすぎリンドな18歳となった時
貧しい家族を養うために傭兵団へと入団する事になったのであった。
「母さん、母さんを楽させてやれるように俺頑張るから」
貧しい家計ゆえに傭兵という命を天秤にかける生業に
赴くリンドの一言であった
「リンド、あなたは昔から身体は丈夫だったけれど
無理はしないでね、命あってこその人生なのだから」
リンドの母、「アンリ」は息子に期待などは向けていなかった、実の息子が命をわざわざ危険に晒す場に行くのに喜べるはずもないのだ
「いつも母さんに心配かけてるみたいだけど、俺はもう18だ一人で何でもこなせるし、それに父さんの様に
立派な戦士になりたいんだ」
リンドの父「ウィル」は戦場で戦果をあげ騎士になったが戦場で部下を庇い戦死してしまった、その父に
憧れてリンドは戦場という地に足を踏み入れたいと決意したのだ。
「確かにお父さんは立派な人だったわ、けれどあたし達を残して逝ってしまった、今度はリンドを失うかもしれないなんて私は考えたくもないの」
アンリの顔からは息子を応援するような表情の反面
悲しげにリンドには見えた、しかしここで踏みとどまってしまえば恐らく永遠に騎士にはなれない
そう言い聞かせ自分を鼓舞しているのだ。
「心配するな、絶対に死にはしない、それだけは約束するよ・・・母さん」
そう言い放ってリンドは18年間住み続けた家を出た。
その時後ろでボソッと
「約束よ・・・」
とか細い声が聞こえたが振り返る事なく足を前に出した、しかしリンドの心の中ではその約束だけは守ると固く固く誓っている、たとえ振り返る事がなくとも
その決意は背中で感じ取れるだろう
「ウィル、私たちのリンドはこんなにもたくましく育ったわよ、見てるかしら?」
アンリはリンドの背中が見えなくなるとそう呟いた、その声がたとえ風にさえかき消されると分かっていても自然と口からこぼれた一言だった
その頃リンドは傭兵団の拠点を目指して歩き続けていた。
自分を大きくさせてくれるという希望を持ち歩いた
それがたとえ命と引き換えの戦場であっても
リンドは歩いた
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