大学編
トレンディ時代
【夫のターン】
「ん……里佳、なに見てるんだ?」
リビングでニヤニヤしながら、妻が冊子を見ている。
「アルバムー、懐かしいなぁ」
「ええっ、どれ……って俺のアルバムじゃねぇか!?勝手に棚を漁るんじゃないと何回言ったらわかるんだ!?」
「……ププッ、修ちゃん、ダサい」
ぶん殴るぞ、テメー。
一通りバカにされた後、里佳のことをつねりながら、少し昔のことを思い出していた。
この女と出会ったのは、大学の頃。出会いは合コンと言う、超絶ベタベタな出会い。
*
*
*
大学二年の冬。
「は、ハメやがったな!」
携帯をいじっている同級生の岳を睨む。
「だってお前、合コンて言ったら来ないだろう? 面子が足らないんだ。非常事態につき、許せ」
自分勝手な理屈を並べ立てて、許される気もないのに『許せ』と言う。そして、この勝手な親友は許されることも織り込み済みでそれがまた腹が立つ。
「行かん! 俺は絶対に行かんぞ」
そう強がってはみたものの、すでに予約を済ませてキャンセル料が支払われる状況。実際問題面子が足りなく、俺がいないと場が盛り下がること。そんなことが頭に浮かび、行かなきゃ仕方ないようにも思ってしまう。
「だいたいなんで合コン誘ってやってんのに断んだよ! むしろ、感謝して土下座して欲しいくらいだわ」
「お前……その台詞何度目だ」
そうだよ、六回目だよ全部失敗してんだよ。
「逆にここまで失敗し続ける奴も珍しくて重宝してるよ。なぜか、女子ウケもいいしな。盛り上がるんだー、お前いると」
な、なんという言い草。完全に個性的モブキャラ扱い。
「だいたい合コンで彼女見つけようなんてろくでもない」
「えっ……じゃあ、お前どうやって彼女見つけるの?」
「いや、例えば図書館とかで――」
「女子か! 夢見がちなシンデレラ女子か!」
くっ……
「いいから行くぞー。いいか、いつも言うように合コンは戦場だ。戦友はすでに会場入りしてるから、気合い入れて行こうぜ」
付き合いきれん……合コンメンバーを『戦友』と呼ぶ親友。
そして……なんだかんだ言って、ちょっと期待してしまっている自分が凄く情けない。
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