ワガママ


【妻のターン】


 私の実家に泊まって一週間が経過。その間、修ちゃんに会ってないし、基本的にはメールのやり取りしかしていない。


 でも……なんで、怒らないのだろうか。


 あんなにメールでからかっているのに、一向に面白い反応がない。そのことに対して、結構ストレスが溜まっている。修ちゃんには、いつもプンスカしてて欲しいと言うのは、わたしのワガママだろうか。


「わ、ワガママに決まってんじゃないの。あんた頭おかしいんじゃない?」


「さ、さすがは母親。わたしの心の声を読むとは」


「あんたの心なんて読んでどうするのよ。これ見よがしに話してたじゃない。本当に修君には同情するわ。ねー、お父さん」


「……」


 お父さんは非常にすっぱい顔をしながら、頷きとも否定とも取れない動きをする。『お前も、似たようなもんだよ』という心の声が聞こえてくる気がした。


「あー、お腹減った。ねー、おかーさーん、ハーゲンダッツ買ってきて」


「嫌よ」


 !?


「な、なんで! 私、妊婦さんなのに」


「我慢なさい」


「我慢はストレスによくないんだよ!」


「アイス食わないぐらいで溜めるほどのストレスもないでしょうに」


 くっ……


「じゃあ、雑誌! 雑誌が読みたい!」


「読めば」


 !?


「2階に置いてあるんだよ! 階段があるんだよ!」


「そのぐらいの運動しなさいよ。お父さんに付き添って貰えば危なくないでしょ」


「私、妊婦さんなのに!」


「水戸黄門の印籠張りにひけらかすんじゃないわよ。それは、自分で言うことじゃなくて、周りが自発的に察して親切にするものなの」


「ぐぐっ……」


 これ以上ないくらいの正論でつぶされた。


「それに少しぐらい運動した方がいいんだから。あんたはここにきて、本当にゴロゴロしまくっているけど」


「そんなこと言ってると、もう帰るよ!」


「帰れば」


 !?


「そ、それが母親の言うこと!? 一人で夜道は危ないんだよ!」


「別にお父さんが車で送るわよ。そもそも、私たちは凜ちゃんさえいればいいんだから。あんたなんて、別にどっちでもいい」


「あ、あなたに人の血は流れてるんですか!? あなたの血は何色ですか!?」


「自分勝手で我儘で他人にすぐに迷惑をかける娘を育てた覚えはありません!」


 キッパリ。














 ――って、私が言うのもなんだけど、育ったんですけど。


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