ママゴト
【夫のターン】
今日は親友の息子であり、娘の友達である剛君が遊びに来た。と言っても、特別なことではなく週2~3回は遊びに来ている。言うなれば、幼馴染。凜ちゃんが浅倉南だとすると、剛君は上杉達也、もしくは上杉和也。
子どもに言うことではないけれど、羨ましいポジションである。
「ねえ、剛君。オママゴトやろー」
「うん、やろー」
そう言って二人で夫婦ごっこを始めた。いつ見ても、子どもたちのママゴトは微笑ましい。
「二人とも仲いいねー」
妻も微笑ましそうな表情をしながら見守っている。
「そうだなー」
「なんか、このまま結婚しちゃったりしてねー」
「……」
「……」
「剛君……ちょっと娘に近いんじゃないか?」
父さん中途半端な男は許さんぞ。
・・・
ピンポーン
インターホンが鳴り、玄関モニターを覗くと親友の岳が立っていた。今日の晩飯の買い出しから帰ってきた。ちなみにこいつの奥さんであり、理佳の幼馴染であるという十字架を背負った真奈ちゃんは、現在、生まれたばかりの子どもと里帰り中である。
妻のお腹が大分大きくなってきたので、代わりに俺がお出迎え。
「ただいまー。剛はいい子にしてたか?」
岳が大量のビールとつまみを持ちながら、靴を脱ぐ。
「ああ、ママゴトやってるよ。二人して夫婦ごっこ。子どものママゴトは微笑ましいよなー」
「そう思うんだったら、凛ちゃんを剛の妻にくれよ」
「馬鹿野郎! 中途半端な男は許さないぞ」
なんて軽口を叩きあいながら、リビングへと入った。
ガチャ。
「剛君、お手」
「ワン」
「お座り」
「ワンワン」
「よーしよし。いい子いい子」
「クゥーン、クゥーン」
・・・
二人ともなにやってんの――――――!?
「フフフ……二人とも微笑ましいね」
バカ妻が聖母のような笑顔で見守るが、犬役にされた剛君の父親(岳)は戸惑っている。
「ち、凛ちゃん!? さっきまで、夫婦ごっこやってなかった?」
いつから飼い主と犬役に!?
「夫婦だよー」
「えっ?」
俺が思わず尋ねた。
「えっ?」
岳も思わず尋ねた。
「うんうん、仲いい夫婦ね」
ああ、お前(妻)は頭おかしいんだったな。
「凜ちゃん、どゆこと?」
「パパとママの真似だよ!」
!?
「修……お、お前……」
親友が二、三歩俺から距離を取る。
「が、岳……違うんだ……」
聞いてくれ……話せば……わからないかもしれないけど。
「修ちゃん……認めちゃいなよ」
「てめーは黙ってろ!」
後で覚えてろよテメー。
「いつもこんなこと……やってんのか?」
「い、いや! そんなわけないじゃないか!」
だから、そんな目で見ないでくれ。
「たまにだよねー♡」
「そう、たまにだ。たまに……えっ?」
「えっ?」
・・・
結局、誤解は、解けなかった。
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