ファッション


【妻のターン】


 私たちは、今、デパートにいる。娘が大きくなってきて、子ども服を買い替えなければいけなくなったからだ。


「はぁ……もらい物でいいでしょうに」


 思わず不満が漏れ出てしまう。正直、子どもはそんなにファッショナブルでなくてもいいというのが私の意見だ。着飾るのは親のエゴで、子どもはそんなには気にしてないんじゃなかろうか。


「バカ! そんなんじゃ服を見る目が養われないだろう! ファッションだって世の中には重要なスキルだ。買い物をして、ファッションセンスを磨くことも幼少からの成長に繋がり――」


 云々かんぬん。


「……」


 お前がファッションを語るな。


 全力で心の中で罵倒した。


 というのも、修ちゃんは超絶ダサい。世界で『ダサい1グランプリ』なるものが開催されれば、間違いなく上位に食い込むぐらいのダサさだ。だから、私と付き合いだして以来、ことあるごとに誘導してなんとか、ダサくない服を着るように誘導している。


「修ちゃん、わかった。わかったから」


「そ、そうか。わかってくれたのなら、いい」


 これ以上、ダサい人のファッション論は聞くに堪えない。適当に夫の話を打ち切って、娘の服を選ぶ。


                ・・・


「理佳、理佳」


「ん?」


「これなんかどうかな?」


「……修ちゃん。凛ちゃんいじめられてもいいの?」


「な、なに言ってんだ! そんなわけないだろう!」


「……」


 じゃあ、なんでその原始時代のような装いをチョイスした?


「ね、ねえ。ここはいいからさ。自分の買ってきなよ」


 さすがに娘が肩身の狭い服を着るのは忍びない。せめて、自己責任でお願いしたいところだ。


「そ、そうか? まあ、女の子だしな……いいか、ちゃんと可愛いの選んでやるんだぞ?」


「……」


 それは、こっちのセリフだ、デパートの中心で叫びたい。


 しかし、夫がやっと紳士服売り場に歩き出してくれる。


「……本当に大丈夫か?」


「……」


 心配性。心配性なダサすぎる夫。


              ・・・


 30分後、娘の服は一通り揃えた。凜ちゃんには「アレがいい?」とか、「コレどう?」とか、いろいろ尋ねたりしてるが、どれも生返事ばかり。ほぼまったくと言っていいほどファッションに関心のない娘である。


 大丈夫かしら……将来、修ちゃんみたいにならないかしら(深刻)。


 レジでお会計を済ませて修ちゃんの行っている紳士服売り場に向かう。


 が、いない。


 どこをほっつき歩いているんだあのダサ夫は。


 その時、


 シャーという音と共に試着室から夫が出現。


「おっ、凛ちゃんの買い物終わったのか?」


「……」


 










 うんこ見たいな奴着てた――――――――――!?




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