買い物


【妻のターン】


 娘のランドセルもまとまったところで、せっかくだから、ショッピングだ。百貨店なんて、普段は行くことはないので、テンションはアゲアゲのノリノリ。


 花屋。


「おっ、いい感じの植木があるな。なあ、理佳。アレ、うちの庭にいいんじゃないか?」


「修ちゃん。ウチに庭なんて……」


「あるよ!」


 食品売り場。


「ママー、アイス食べたーい」


「ダメよ、さっきたこ焼き食べたじゃん」


「食べたーい」


 なんて食い意地の張った娘だろうか。誰に似たのかしら……うん、きっと修ちゃん似だな(確信)。


「ダメ」


「どうしても?」


 天使のような可愛い顔で娘が尋ねてくる……間違いなく、この子は将来魔性に育つ。いったい、誰に似たのかしら……うん、おばあちゃんだな(確信)


「うん、どうしても」


 しかし、ここで甘やかさない。これが、母親の愛情である。欲しいと駄々をこねる物を、欲しいままに買い与えてしまたら、きっと娘はダメになる。我慢を指せないとダメなのだ。


「パパ―」


 身を翻して、修ちゃんの元に走る娘。


「なんだーい凜ちゃん」


「えっとねぇ、凛、アイス食べたーい」


 信じているよ。私は父親の愛を信じる。我儘し放題の娘に育つかどうかは両親の躾次第だということを。そして、修ちゃんは父親としての尊厳を――


「いいよー!」


 !?


「ちょ……修ちゃん!?」


「な、なんだよ」


「さっきたこ焼き食べたじゃん。今、アイス食べたら夕ご飯食べれなくなるよ!?」


「……うーん、でもなぁ」


 夫が悩んでいる。


「パパ―、ダメ?」


「いいよー!」


 !?


「ちょいちょいー!」


「な、なんだよ。今日ぐらいいいじゃないか」


「今日ぐらいって……あなたは親でしょう!? 今日ぐらいが一番ダメでしょう? 今日ぐらい、今日ぐらいって家族のルールを捻じ曲げて行ったら、収集つかなくなるよ」


「……それは、俺がお前に対して一番言いたいことではあるが」


 うぐっ。


「お、大人はいいのよ! 良識と判断力があれば」


「お前に良識と判断力は著しく欠如しているとしか思えないが」


 うぐぐっ。


「今は子どもの話でしょ!?」


「……まあ、確かにな。それにしても……お前が正論吐くなんてレアすぎるな」


「そ、そう。エヘヘ」


 褒められちゃった♡


「……だいたい考えていることはわかるが、断じて褒めてないぞ」


 そ、そうですか。


「ねえ、パパー」


「……」


 夫が迷っている。


「……ダメ?」


「凜ちゃん……我慢できるかな」


 夫は見事誘惑を振り切って、娘に自制を促した。


 よしっ! よくやったぞ修ちゃん。


「……わかった、凛、我慢する」


 シュン。


                ・・・











 十分後、夫は、アイスを箱で買ってきた。



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