ダイエット案


【夫のターン】


 最近起きて一番にやること。


「ふぅ……増えている」


 そう……体重計のる。


「修ちゃん太ったねー」


「い、いつのまに」


 忍者かお前は。


「て、なに勝手に体重見てんだよ!」


「乙女か!」


「ぐっ……」


 ぐうの音も出ない。


「ちょっとは運動したら?」


「そりゃそうだけど……いろいろ忙しくて」


「典型的なダメ人間ね」


「ぐっ……」


 またしてもぐうの音も出ない。


「時間て作るものでしょう!? そうじゃないんですか? そんなこと言ってるからこんなお腹になったんじゃないんですか!」 


「こら……わかったから、三段腹を引っ張るのはやめてくれ」


「私は個人的にこのお腹をタプタプするのは好きデス! 修ちゃんも気持ちよさそうにしていますが、あなたの健康を思えばこそ、やせなくてはいけません」


 ……決して気持ちよさげにしてるつもりはないが、言っていることは正論である。


「わかった! じゃあ、今CMで話題の――「ダメです」


「……えっ?」


「基本的にお金がかかるのはダメです! アレはお金に余裕がある人がやるものです。ウチにそんな余裕はありません」


「た、確かに……」


「悔しかったらGDPあげてください」


「……なぜ俺が日本の国民総生産をあげるんだ?」


「間違えました! 安月給です!」


「うるせえよ」


 言っていることはハチャメチャだが、言わんとしていることは伝わった。


 確かに、我が家には、凛ちゃんの教育費以上に優先すべきものはない。


「ちなみに今月からお小遣いを1000円減らします!」


「……今、このタイミングで言わなくてもよくないか?」


「いえ! これは、作戦です! お金が無くなれば、お菓子が減るでしょう? お菓子が減れば、体重は減るでしょう? 名付けて、『強制ダイエット』」


「……俺は世界で最低なダイエットだと思う」


 酷すぎる。あまりにも俺の欲望を度外視したダイエット方法。


「それから、ご飯のお代わりは、1杯まで。お肉は修ちゃんだけなし。炊事洗濯洗い物トイレお風呂掃除、帰ったら料理を作ってください。凜ちゃんのお世話を飽きるまでやって、休日には凛ちゃんを公園まで連れてってあの尋常ならざるエネルギーを発散させてきてください! 恐らく、1カ月で3キロは固いでしょう!」


 ビシッ! と自信満々にグーマークをみせる妻。


「……それでお前は?」


「もちろん! 浮いたお金と時間で真奈(親友)と温泉!」


「……代案を思いついた。お前と毎日プロレス」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「ちょ……修ちゃ……まっ……うぎゃ――――――――」







 結果的に、少し、やせました。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る