京都旅行×5
【妻のターン】
帰りの車内、運転は修ちゃんだ。
「たまにはお前が運転しろよ」
「グー……グー……」
「いや俺が悪かった。せめて、起きろ」
「あいあいさー」
「やっぱ狸寝入りじゃねえかこの野郎」
凜は疲れ果てて、ぐっすりだ。夫婦水入らずの2人きり。
「でも、懐かしいねー。一年前の愛媛旅行もこうやって車で行ったよねー」
「……お前、出発十分で寝てたじゃないか」
そ、そうだっけ。
「この車で富士山にも行ったし」
「……その時もぐっすりだったけど」
「と、鳥取砂丘!」
「以下同文」
ごめーん! 毎回寝ててごめーん!
「でも、いつもありがとうね」
「なにが?」
「全部!」
「……言うの面倒くさいだけだろう?」
「違うよ」
本当に全部。
「わっ! お、お前なにすんだよ」
「ヘヘ……びっくりした? 眠気覚まし。嬉しい?」
「バカっ、お前なにをバカ……」
照れてる照れてる。
・・・
養老サービスエリアに着いた。
「ふぅー。ちょっと休憩。30分くらい寝るわ」
「お休み」
「……ってお前、なにをすり寄ってきてんだよ」
「一緒に寝よ?」
「ば、バカ! 狭いだろ」
「狭いからいいんじゃん。ウリウリ」
「や、やめろよ」
そう言う割には抵抗が弱い。実はそんなに嫌がってない状態。
「にゃんにゃん♡」
「……ぶっ飛ばすぞ」
こ、これは未だに許されていないようである。
「んー」
ほっぺでスリスリ。
「……」
これは、凄く嬉しそうだ。
一つのシートで夫と私で2人。イチャイチャ的な展開。ラブラブビーム全開。
「お前……凛起きちゃうし……」
「いいじゃん。一緒に寝てるだけだし」
「ま、まあそれはそうだけど」
「修ちゃん、見てよ、空」
窓の外で満天の星空が瞬いている。
こんなのも、たまにはいい。お互いに冗談したり、からかったりも楽しいけれど、二人で仲良く同じものを見て愛し合うのもたまには。
「……里佳」
「ん?」
「……いつもありがとうな」
「なにが?」
「……全部」
「フフ……じゃあ、もっとイタズラするね」
「……それ以外」
あら。
「ねえ、パパ、ママ」
!?
「り、りりりりりん!? 起きちゃったのか?」
「ちょ、ちょちょちょちょっとだけうるさかったかな? アハハ、アハハハハ」
な、なにやら凄く恥ずかしい。二人して凄く恥ずかしい。
「おトイレ行きたい」
「そ、そうか! そうだよな、里佳、連れてってやりなさい」
「ラ、ラジャー! 了解しました将軍閣下」
それからは、互いに気恥ずかしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます