結婚式

【夫のターン】


「ふふ……ふふふふ」


 妻がテレビを見ながら不可思議な笑みを浮かべている。


「なに見てん………はぁ。また、結婚式の映像見てるのか。なにが面白いんだ」


 普通、感動で涙ぐむとかだろう。まあ、お前に普通を求めてもしょうがないが。


「滑稽……修ちゃん、滑稽っ」


「殴るぞ」


 ……結婚式を思い出すと、今でも恥ずかしすぎて死ねる自信がある。


               *


【新郎のターン】


 七年前。 結婚式前夜。


               ♪♪♪


「……もしもし」


「あっ、修ちゃん? おはよ。眠れた?」


「いや、ほとんど」


「フフフ……新婦より緊張する新郎がいるー? 私なんて、ぐっすりだったよ」


「……いや、お前が結婚式前夜にも関わらず、『或る夜の出来事』借りてきて一緒に見たからだけどな」


「そうねぇ、いい映画だったね」


「……花嫁逃亡してんじゃねぇか」


「あっ、いっけない。そろそろ準備しなきゃ。じゃ、式でね」


「来いよ! 絶対に来いよ!」


「……さよなら」


 ガチャ


「もしもし! もしもしもしもし!」


 あの女……奴とはもう一度結婚について深く話し合う必要があるようだ。











 ……だから、来て。お願いだから。

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