からかい

【妻のターン】


 スーパーを出た帰り道、これ見よがしに肩を落としている修ちゃん。


「そんなに落ち込まないでよ、トレンディ」


「誰がトレンディだ!」


 修ちゃんが噛みつくように反論する。でも、トレンディだったのは紛れもなく事実だ。


 大学の頃、修ちゃんが名づけられたあだ名。合コンでトレンディとバカにして智美と嘲笑っていたことが懐かしい。夫は私のようないたずら好きの性格の人にモテるらしく、なにかにつけてバカにされていた。


「で! なんでトレンディなんだ?」


「エへへ。いいセンスでしょう私がつけたんだよ」


「き……貴様……」


「トレンディ俳優って言ったら、 江口洋介でしょ」


 もちろん、私的にはだ。


「えっ……」


 ちょっと嬉しそうな表情をする夫。


「うん、そういうことよ」


「う、嘘だろそんな俺が江口洋介なんて」


「うっそー! そんな訳ないじゃんばっかじゃないの」


「き……貴様……つねるぞ」


「やーめーてっ。ごめーん」


 ホントは服装と髪型が明らかに90年代の髪型だったからだ。『うっわー、世の中にこんなダサい人いるんだー』と心底感心させられたことは今でも記憶に残っている。


「でも、私は全然後悔してないけどね」


 そう言って修ちゃんに右手を絡めると、明らかに夫は照れた表情を浮かべた。


「……お前はいっつもそんな適当な嘘いうな!」


「もちろん嘘でーすっ! めっちゃ後悔して――痛痛痛痛痛痛っ!?」








 ……からかい過ぎると……つねられる。


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