第181回『三階建て』→逆選王☆☆☆☆☆☆☆☆

 私は『アスリートのお宅拝見』という番組のキャスター。都内のある場所に来ている。

「さて、今日のゲストのスポーツは何でしょう?」

 実は私も知らされていない。建物を見て予想する様子も番組の一部なんだそうだ。

「この家は……」

 多くのアスリートの自宅の中にはトレーニング室があり、そこで種目も予想できる。が、今回は外からも種目が丸わかりだった。

「壁に沢山のホールドが付いています!」

 そう、三階建てのコンクリートの外壁には壁を登るためのホールドが無数に付けられていたのだ。

 そこでアスリート本人が登場。案の定スポーツクライミングのオリンピック代表、野口中選手だった。

「野口中選手はこの壁を毎日登られているのでしょうか?」

「もちろんです。そのための三階建てですから」

 私は建物を見上げる。

 屋上までかなりあるしオーバーハングもある。これを毎日登ったらかなりの練習になるだろう。

「それでは中も拝見させていただいてよろしいでしょうか?」

「もちろんいいですよ。ではこれを付けて下さい」

 野口中選手は私にハーネスを差し出した。

「といいますと?」

 彼女はニコリと笑うと私に言ったのだ。

「玄関は屋上にありますので」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る