第21話 研一、見つかる
2人がその声に振り返ると、そこには実物大のミッフィーとミニーマウスが立っていた。そしてぽわん、と煙がその二人を包んだかと思うと、雪のクラスメイトの
フルアバターを解き、セミアバターとなった2人は並んで見るとそのシルエットは凸凹だった。
一方で、杉山美緒はアウトドア系だろうか、
「あ、ミキ! 美緒も。なんでここにいるの? 今ミッフィーとミニーじゃなかった? どうやって変装したの?」
杉山美緒が雪を見下ろすようなアングルで、そのハスキーボイスを響かせた。
「カトユキ、フルアバターって知らないの? オルタナで姿を完全に変えられるんだよ。今、結構可愛いやつ沢山あるよー」
ミッフィーとミニーのフルアバター。それなりの値段がするはずだった。有名なブランドのフルアバターはそれなりに使用料も高いからである。
「カトユキ、ピュアサンデー食べたの? いいな〜。私たちが行った時、もう売り切れてた。これで3日間も通ってるのに」
そんなやりとりを研一は横で眺めながら、いたたまれない感情に襲われた。
最も恐れていたことが起きてしまった。
今すぐここから消えたい、逃げたい、隠れたい。存在を消すにはどうすれば? そんなことばかり考えていた。
そんな中、杉山美緒が素っ頓狂な声をあげた。
「あれ? 松屋君、松屋研一君じゃない。うっそー、あんたたち付き合ってるの?」
雪が少し背伸びをしながら、杉山美緒の肩を思いっきり叩いた。
「まさか〜、そんなわけ無いじゃん! 私が連れ回してるだけだよ。オルタナのこと色々教えてもらってるの、研一君すごいんだよ、ピュアサンデーだって特別枠で買えたし、他にもね……」
沢山の研一の宣伝をする雪にただただうなずいていた神城ミキと杉山美緒は、その後、じゃあね、といって去って行った。
その姿をしばらく見送ったあと、雪はさっと研一の方へ振り返り、真面目な顔をした。
「研一君。ではそろそろ本日のメインイベントの場所に行きましょうか」
雪は腕を組み、口を結び、そのまま何度か小さくうなずいていた。
研一の胸の中には、複雑な、様々な色をした液体が混ざり合って、なんとも言えないその重たいものが、ずんとのしかかっていた。
21:01:53
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