2つ目の方法
第38話 2つ目の方法
「それでは2つ目の方法についてお話します」
まずその前に……。そういってJは雪に優しいまなざしを向けた。
「ユキ、だいぶ疲れたでしょう。これをどうぞ」
Jが何らかのキーをタッチすると、雪の目の前にカップに入ったコーヒーが現れた。
「これ、何?」
「コーヒーです」
「ごめん、私あまりコーヒーって得意じゃなくって……」
「いいから飲んでみてください、飲みやすいですよ」
おそるおそる雪はそのカップに口をつけた。
「あ、本当だ! 飲みやすい」
「ノルウェーコーヒーです。まるでワインのような風味とも言われます。この香りで気分を落ち着かせる効果もあります」
このオルタナの仮想現実の世界にも関わらず、そのノルウェーコーヒーの香り、味、わき上がる蒸気は本物と区別がつかないほど精密に再現されていた。
「それとこんなのもどうでしょう」
こんどは雪の耳に、優しい音楽が流れ始めた。
「わあ、素敵。これ何?」
「僕がよくリラックスしたいときに使うヒーリングミュージックです。少し休んでください」
ありがとう、そういうと、雪は目を閉じ、静かに心を落ち着かせ始めた。
その姿をしばらく見つめてから、Jはゆっくり、ゆっくりと、まるで何かに見つからないよう忍び寄るように研一を見つめ直した。その徐々に自分に向けられる視線に、研一はどこかただならぬ気配を感じた。
これから何かが始まる、そう直感させる目つきだった。
Jは口を閉じたまま、その声を研一に届け始めた。
「それでは2つ目の方法をお話しします」
その声は研一だけに聞こえる特殊な方法を使われていた。
そこで研一は確信した。これからの話は簡単ではないということを。
08:55:50
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